グラストンベリー音楽祭「IDFに死を」発言波紋 英バンド、米ビザ取り消され英警察も捜査

英ラップパンクグループ「ボブ・ビラン」のメンバーが、世界的なグラストンベリー音楽祭でのライブ中に問題発言を行い、国際的な波紋を広げている。6月28日のステージで聴衆にイスラエル国防軍(IDF)への「死を」と叫ぶよう促したことが発端となり、メンバー2人の米国ビザが取り消され、英国警察も捜査に乗り出した。この一件は、著名な音楽イベントにおける政治的発言と、その影響について改めて注目を集めている。

米国の対応

米国務省のクリストファー・ランドー副長官は6月30日、グラストンベリーでの「憎悪に満ちた暴言」を理由に、ボブ・ビランのバンドメンバー2人のビザを失効させたことを明らかにした。ランドー副長官は自身のX(旧ツイッター)でも、「暴力と憎悪を賛美する外国人の訪問を我が国は歓迎しない」と強調した。ボブ・ビランは10月下旬から米国ツアーを予定していたが、今回のビザ失効によりこれが不可能となった。米国務省は、テロや反ユダヤ主義の支持者と見なされる人物に対し、厳格なビザ制限措置を取っている。

フェスティバルでの発言

問題の発言は、ラッパーのボビー・ビランがステージ上で行ったものだ。彼はまず「パレスチナに自由を」と叫び、続いて聴衆に対しイスラエル国防軍(IDF)への「死を」と唱和するよう促した。公開された動画には、ビランがマイクを通して「これを聞いたことがあるか? 死を、IDFに死を」と叫ぶ様子が映っている。また、ステージ後方のスクリーンには「国連はこれをジェノサイドと呼んでいる。BBCは『紛争』と呼ぶ」というメッセージが表示された。英公共放送のBBCはこのフェスティバルをライブ中継していたため、このメッセージも放送されたことになる。

グラストンベリー音楽祭のステージで演奏するボブ・ビランのメンバー。イスラエル国防軍(IDF)に関する問題発言があったライブの様子。グラストンベリー音楽祭のステージで演奏するボブ・ビランのメンバー。イスラエル国防軍(IDF)に関する問題発言があったライブの様子。

バンド側の声明

ボビー・ビランは公演翌日の29日、自身のインスタグラムに声明を投稿した。彼は「私は自分が言ったことを言った」と述べ、公演後に「賛同と憎悪の両方のメッセージ」が届いたことを明かした。さらに、「自分たちが求める変化のために声を上げることを、子どもたちに教えよう。それだけが、この世界をもっといい場所にできる唯一の方法だ」と主張。未来世代が立ち上がり、社会を変えていくことの重要性を訴えた。彼は、自身が受け継いだ「炎」を未来の世代に渡すことの重要性を強調している。

英国・各方面の反応

この発言を受け、英国警察はコンサート映像の検証を開始した。キア・スターマー英首相は「このような恐ろしい憎悪発言に弁解の余地はない」と強く非難している。在英イスラエル大使館も、フェスティバルでの「扇動的で憎悪に満ちた」発言に対して強い不快感を表明した。BBCの広報担当者は29日、CNNの取材に対し、ビランの公演中の発言に強い遺憾の意を示し、この公演のオンデマンド配信を行わないと説明した。30日には、事後的に考えれば生中継を中止すべきだったとの見解を示し、「表現の自由は尊重するが、暴力の扇動には断固反対する」と強調。「ボブ・ビランが示した反ユダヤ感情は一切容認できず、我々の放送にその場はない」と付け加えた。ボブ・ビランの音楽は、人種差別や性差別、経済格差といった社会問題を取り上げた歌詞が特徴として知られている。

グラストンベリー音楽祭での英バンド「ボブ・ビラン」のライブにおけるイスラエル国防軍への問題発言は、米国によるメンバーのビザ取り消し、英国警察による捜査開始、そして各方面からの強い批判という国際的な波紋を広げている。この一件は、表現の自由とヘイトスピーチの境界、そしてエンターテイメントの場における政治的発言のあり方について、改めて議論を提起していると言える。今後の捜査やバンドの活動への影響が注目される。