米大統領選で再選を狙う共和党のトランプ大統領(74)は4日未明(日本時間同日午後)、ホワイトハウスで演説し「我々は勝った」と勝手にぶち上げた。激戦州フロリダを制するなど、民主党のバイデン前副大統領(77)を猛追、事前予想を覆す大接戦に持ち込み、最終勝者の決定は遅れる見通しだ。民主党支持者の票が多いとされる郵便投票の不正を一方的に訴え、法廷闘争も示唆。有権者の切り捨てともいえる、トランプ氏の再選へのゆがんだ執念があらわになった。
【写真】会見を行ったトランプ大統領(AP)
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「私たちはいたるところで勝っている。私にすれば勝ったも同然。率直に言って我々は勝った」。トランプ氏は4日未明、ホワイトハウスで演説し、各州の情勢について個人的見解を示しながら、勝手に“勝利”だと繰り返した。実際は大接戦で、まだ米主要メディアも当確を出していない。メディアの当確情報が出ていない州の勝利にまで言及し、メディアから打ち消されるひと幕もあった。
勝手なアピールの理由は、今後開票が進む郵便投票への不安だ。今回は投票率が過去最高の67%と予想され、期日前投票は1億を超え、うち郵便投票は少なくとも6500万以上とされる。しかも郵便投票は民主党支持者が多いとみられ、消印次第で投票日以降も受け付け可能な州も。集計は大幅に遅れるとみられる。
序盤にトランプ氏が先行する状況は、共和党の赤と絡めて「レッドミラージュ(蜃気楼=しんきろう)」と呼ばれる。今後、郵便投票が開票されれば蜃気楼は消える-皮肉なたとえだ。
トランプ氏は選挙戦でも4日の演説でも、郵便投票には不正があると繰り返し主張。今後の集計分の無効などを求めて「連邦最高裁判所まで争い、やめさせる」とまくしたてた。トランプ氏は演説前にも「彼らは選挙を盗もうとしているが、そうはさせない。投票日後には投票できない」とツイート。ツイッター社から警告を受けた。
ただ、各種世論調査で劣勢だったトランプ氏が追い上げ、選挙戦は予断を許さない。トランプ氏は重要州のフロリダ、テキサス、オハイオなど23州、バイデン氏は18州と首都で勝利。当選には選挙人の過半数270人が必要だが、日本時間4日午後11時45分現在のCNNテレビ集計では、トランプ氏213人、バイデン氏224人と拮抗(きっこう)。勝敗の行方はラストベルト(さびた工業地帯)と呼ばれる3州など9州の結果が鍵を握る。トランプ氏は最激戦州ペンシルベニアやミシガンで先行するが、ペンシルベニアは郵便投票の6日到着分までが有効票。トランプ氏の「不正」発言は、焦りの裏返しだ。
「まさか」といわれた前回と同じ大逆転か敗北か。それとも自身が訴えた「法と秩序」を無視した決着か。「トランプの4年」で混乱した米国はまだ、トランプ流に振り回されそうだ。