政府は中学生までの子供がいる世帯に支給する児童手当について、所得制限を超える場合子供1人当たり月額5千円を支給する「特例給付」を来年度中に廃止する方向で検討に入った。支給額の算定基準も、世帯で最も稼ぎが多い人の収入をベースにする制度を世帯全体の収入を合算する方式へ切り替え、捻出した財源を菅義偉首相が掲げる待機児童の解消策に充てる。
【グラフ】東京・世田谷の待機児童は全国最多から一転「ゼロ」に
政府は現在の所得制限基準を据え置いたまま特例給付を廃止した場合、900億円程度の歳出削減効果を見込んでいる。さらに、これまでは夫婦共働きの場合、どちらか多い方の年収が所得制限内に収まれば原則支給対象にしていたが、世帯内で合算した額を基準とするよう改める方向だ。
共働き世帯で夫婦の年収がいずれも所得制限を下回る場合、世帯の収入を合算した額が基準となることで、満額支給されていた手当がゼロとなるケースが生まれる可能性もある。
政府が見直しを検討するのは、待機児童対策に必要な財源を確保するためだ。待機児童数は保育所の整備などで減少傾向にあるが、今年4月時点で1万2439人にのぼる。女性の就業率が上昇した影響もあり解消には至っていない。
首相は10月26日、衆参両院の所信表明演説で「待機児童の解消を目指す」と明言した上で「長年の課題である少子化対策に真正面から取り組み、大きく前に進めていく」と表明した。
だが、解消への道のりは険しい。今年度からの5年間で新たに14・1万人分の保育施設の整備が必要と見込まれ、約1600億円の追加財源が必要となる。
平成30年度から始めた政府の「子育て安心プラン」では、企業の拠出金を保育園の運営費に充ててきたが、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた企業はさらなる負担増を懸念する。政府はこうした事情も考慮した。
ただ、見直しは子育て世帯への影響が大きい。一連の改正が難しい場合は年収の基準を引き上げ、支給額がゼロとなる世帯を減らすことも検討する。さらに多子世帯への児童手当増額といった支援策も検討する。
政府は12月上旬をめどに、所得制限の年収基準など具体的な設計を決める。