韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、米大統領選で民主党のジョー・バイデン前副大統領が勝利に近づいたことに戦々恐々としている。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との首脳会談を3回行ったドナルド・トランプ大統領とは違い、バイデン氏は「対北・対韓強硬派」とみられるのだ。「南北統一」を悲願とする文大統領の外交政策が、厳しい状況に置かれる可能性が高まってきた。
「青瓦台・与党『米国大統領に誰が当選しても韓米血盟は堅固』…康京和(カン・ギョンファ)外相は8日に訪米へ」
朝鮮日報(日本語版)は6日、こんなタイトルの記事を報じた。
韓国大統領府と与党「共に民主党」は、バイデン氏が北朝鮮への圧力を前面に出す「戦略的忍耐」政策に転換すると分析。康氏を訪米させて、さまざまな関係者と接触するという。
バイデン氏は10月22日のテレビ討論会で、正恩氏を「Thug(=悪党、乱暴者、凶悪犯)」と呼び、正恩氏との良好な関係を築いてきたトランプ氏を猛烈に批判していた。
朝鮮日報(同)には6日、「WTO事務局長候補の兪明希(ユ・ミョンヒ)氏、『美しい辞退』検討」との記事も掲載された。
WTO事務局長選挙で兪氏を支持してきたトランプ政権の継続が難しくなったため、兪氏の敗色は濃厚と白旗を上げるようだ。
そもそも、バイデン氏は「韓国嫌い」という見方がある。米国の同盟国なのに、中国にすり寄る姿勢が許せないとされる。副大統領時代に訪韓し、当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領に、「米国の反対側(=中国)に賭けるのはよくない」と厳命したとされる。
韓国事情に詳しいジャーナリストの室谷克実氏は「バイデン氏は、韓国にはいい印象を持っていない。文氏は焦って、自分が追い落とした朴前大統領派の人脈に頼って、何とか取り入ろうとしている。バイデン氏は、実務者交渉を積み上げる外交をする政治家で、トランプ氏のような思い付きでは動かない。南北統一どころか、南北融和もあり得ないと判断し、北朝鮮にも韓国にもきつく当たるのではないか」と語っている。