自転車で転倒し重傷、ぶつかりそうになった車運転の男性は2千円渡し立ち去る


自転車で転倒し重傷、ぶつかりそうになった車運転の男性は2千円渡し立ち去る

 先月、高知市内の県道で、高校1年の女子生徒(15)が車とぶつかりそうになって転倒し、重傷を負う事故があり、高知南署が現場を立ち去った運転手を捜している。衝突や接触がなくても道路交通法違反(ひき逃げ)になる可能性があるためだ。同署は遺留品のDNA鑑定や目撃情報の収集を行い、運転手の特定と原因の究明を急いでいる。(大家広之)

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 捜査関係者によると、事故は10月14日午前7時40分頃、同市朝倉丙の県道で発生。歩道を自転車で走っていた女子生徒が脇道に左折してきた車に衝突しそうになった。直前で車が急停止したため接触は免れたが、避けようとした女子生徒は道路上に投げ出され、顔などを打った。

 直後、顔から出血した女子生徒がうずくまっていると、高齢男性が車から降り、紺色のハンカチと千円札2枚を差し出した。「ごめんよ」と声もかけた。ところが、女子生徒が壊れた自転車に気を取られていた間に、車に戻って走り去ったという。

 通りかかった別のドライバーが警察に通報。女子生徒は家族に連絡し、病院に向かった。診断結果は鼻や目の奥の骨を折る重傷で、約2週間の入院。女子生徒は事故当時を振り返り、「車を慌ててよけようとしてこけた。男性が『ごめんよ』と謝ってくれたときは、てっきり病院に連れて行ってくれると思った」と声を落とす。

 今回は一般に「非接触事故」と呼ばれるケース。立ち去った男性は罪に問われるのか。県警によると、車の動きと負傷に因果関係があれば、人身事故になる。ひき逃げになるのは、たとえば通行人の前で急ブレーキをかけたはずみで人が転んで負傷。運転手が自分の責任を認識しながら、救護措置を取らずに逃げた場合などだ。

 平川法律事務所(高知市越前町)の大村耕作弁護士も「悪質な場合、ひき逃げで刑事裁判になった例はある」と語る。

 専門家によると、衝突や接触がないと、運転手は自分に甘くなる心理が働くという。九州大の志堂寺和則教授(交通心理学)は「接触がないと相手が負傷していても『自分が直接的な原因ではない』という考えや面倒なことに関わりたくないという思いが芽生え、倫理観が薄れる」と指摘。「たとえ衝突していなくても衝突と同じように救護などの必要な措置をすべきだ」と話している。

 高知南署は「運転手に非があるかどうかは未知数」としながらも、状況を知るため、事情を聞く必要があると判断。近くの防犯カメラを確認するとともに、遺留品のハンカチに付着した汗などの微物をDNA鑑定している。事故の起きた同じ時間帯に現場を通る車を呼び止め、立ち去った運転手につながる情報がないかも確かめている。

 立ち去った男性は60~70歳代。白髪交じりで、黒っぽい乗用車に乗っていたという。女子生徒の母親(44)は「ヘルメットをしていたから助かったが、一歩間違えれば命の危険があった。運転手にはまず名乗り出てほしい」と訴えている。



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