ファイザー・ビオンテックが開発中のワクチン候補 [写真 ファイザー]
米ファイザーと独ビオンテックが共同開発中の新型コロナウイルスワクチンに関心が高まっている。このワクチンの候補物質が最終臨床試験段階の第3相で「90%以上効果がある」という中間結果を得たからだ。しかし輸入前から流通や接種に関連する懸念が少なくない。ファイザーのワクチンの場合、マイナス70度という難しい条件で運送しなければならないうえ、近所の病院や地域保健所では接種できない可能性も高いからだ。
◆常温に脆弱なファイザーワクチン
中央防疫対策本部によると、ファイザーは他のワクチンとは異なる「mRNA」(メッセンジャー・リボ核酸)ワクチンだ。一般的なワクチンはウイルスを弱めたり殺したりした後に人に投与する。その後、体内の免疫体系が作動して抗体を作る。これとは違いmRNAは遺伝情報に基づき人の体内でウイルス蛋白質(抗原)を作る。この蛋白質が抗体の形成を助ける。
mRNAはウイルスを直接人体に投与しないという長所がある。その代わり保管が難しい。マイナス70度の条件を守らなければいけない。韓国の「ワクチン保管および輸送管理ガイドライン」のうち冷凍庫温度(~マイナス50度)よりもはるかに低い。それだけ常温露出に脆弱になるしかない。
◆専用容器で輸入される可能性高い
ファイザーと米国疾病管理予防センターの説明を総合すれば、ファイザー側は最大5000回分のワクチンを包装できる専用容器を開発した。専用容器にドライアイスを入れれば、マイナス70度の条件で最長25日間運送・保管が可能だという。ファイザーのワクチンは一般的なコールドチェーン(冷蔵流通)範囲のプラス2-8度では品質を5日間維持する。
またファイザーのワクチンは外国から全量を輸入しなければいけない。韓国ファイザー製薬で生産しない。食品医薬品安全処が「特例輸入」を承認してこそ国内に入る。
◆小分けで搬送するマイナス70度の容器はない
特例輸入が決定しても問題だ。超低温流通に対する国内の基盤が脆弱であるからだ。ファイザーのワクチンを地域の病院や保健所に送るには、専用容器内の量をまた少量容器で再包装する必要がある。少量容器内の温度もマイナス70度に合わせなければいけない。
一般的な輸入ワクチン(適正温度2-8度製品)の流通過程をみると、まず輸入会社が調達契約会社に物量を運ぶ。その後、首都圏と近い地域の場合、調達契約会社が小型冷蔵車両(1トン)を利用して配分量だけ医療機関や保健所に配送するシステムだ。長距離の全羅道(チョンラド)・慶尚道(キョンサンド)・済州道(チェジュド)地域は拠点物流センターから下請け会社が運送する。
◆常温露出事態、適正温度違反が196件
こうした段階別の運送過程で超低温コールドチェーンが崩れる可能性が高い。先日のインフルエンザワクチン常温露出事態当時、適正温度(2-8度)範囲外の事例が196件と確認された。しかしファイザーのワクチンは常温に露出する場合、6時間以内に使用しなければならない。
韓国中央防疫対策本部の権ジュン郁(クォン・ジュンウク)第2副本部長(国立保健研究院長)は10日の定例会見で、「mRNAワクチンの場合、低温でなければ安定性のため事実上効力がない。このため温度を維持するためのいくつかの案が必要だ」とし「実際に接種する時にもさらに変数が生じることも考えられる」と述べた。続いて「非常に複雑な準備過程、さらに精巧なシミュレーションと反復的な教育訓練が必要」と話した。
◆遠征接種の可能性も
ファイザーのワクチンの場合、冷蔵状態で5日間品質を維持できるとはいえ、医療機関で厳格に在庫が管理されなければいけない。このため「遠征接種」の可能性も出てくる。
中央事故収拾本部のソン・ヨンレ戦略企画班長は「マイナス70度までコールドチェーンをするのは難しい」とし「(運送物量を)大きく分けるのは可能とみられるが、インフルエンザワクチンのようにすべての医療機関に運送して接種するのは難しいだろう」と述べた。