香港(CNN Business) ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は19日までに、新型コロナウイルスの流行で短期的には企業を取り巻く環境が悪化するとの認識を示し、「最悪のケース」に備えて手元の現金を積み増していると明らかにした。
孫氏は17日の米紙ニューヨーク・タイムズのオンライン会議に東京からリモート出演し、「今後2、3カ月でどんな最悪の事態が起きるかわからない」と述べ、それへの備えとして「約800億ドル(約8兆3000億円)を手元に置いてある」と明かした。
そうした現金は一部、ソフトバンクの自社株買いに利用されている。孫氏は同社が市場で過小評価されているとの発言を続けている。
孫氏は今年初め、バランスシートの強化のため資産の売却を進めると発表。当初は目標額を410億ドルに設定したが、結局その2倍近い金額になった。「資産の多くを可能な限り早く現金化したのは当社の歴史で初めてだった」と語った。
新型コロナの治療薬やワクチンが大量供給される前に、大手企業のいくつかがつぶれて関連産業に「ドミノ倒し」が起きる可能性もあるとも指摘。1つの銀行の破綻(はたん)が銀行業界全体を震撼させ、世界中の株式市場が暴落したことがあると述べ、リーマン・ブラザーズの破綻を例に挙げた。
孫氏はまた、人工知能(AI)革命への長期的な投資の一環として、既存の大手企業にも投資しているとも述べた。グーグルやアマゾン、フェイスブック、アップルといった会社はAIの開発で重要なプレーヤーだとも語り、投資対象は「ユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場のベンチャー企業)か、公開会社か、非公開会社かは問わない」とした。
投資の中には結果がでないものもある。先週SBGは4~9月期の上場株式等への投資による損失が1317億円だったと公表。流動性の高い優良企業やデリバティブ商品に投資する最近の戦略については「試験的なプログラム」と述べた。
孫氏これまで、非公開のITベンチャーに多額の投資をすることで知られ、数年後に大きな成果となったものもあれば損失を生み出したものもある。
有名な中国のネット通販大手アリババへの投資では、20年前の2000万ドルの投資が2014年の株式公開時には600億ドルに化けた。一方で、最近実施した米シェアオフィス大手ウィーワークへの投資は、苦境に陥った同社救済のために多額の支援パッケージを提供せざるを得ない状況となっている。