新型コロナウイルスの出口がなかなか見えない中で韓国5大グループが各種手段を動員して現金を増やす方向に急旋回したことがわかった。
中央日報と韓国経済研究院が1日、7-9月期のサムスン、現代自動車、SK、LG、ロッテの5大グループ系列上場企業34社の財務活動キャッシュフローを分析した結果、総額2兆9000億ウォンでプラスに転じた。
◇現金8兆ウォン流出から3兆ウォン流入に
財務活動キャッシュフローは企業が資本を調達して返す過程での現金の流出入を示す。特定期間に企業が借りた資金を返したり株主に配当金を支給すればマイナスになり、資金が不足して資金を借りたり資金調達に向け有償増資をして社債を発行すればプラスとなる。
4-6月期までだけでも5大グループの財務活動キャッシュフローはマイナス7兆8000億ウォンで大幅のマイナスを記録していた。その後7~9月期には2兆9000億ウォンを記録しており現金確保に乗り出した格好だ。新型コロナウイルス長期化にともなう不確実性に備える一方、電気自動車やバッテリーなど新成長分野に投資するための実弾を用意しようとする目的と解説される。
◇商売は厳しいが投資はしなければならず…
投資業界の大口投資家に挙げられるソフトバンクグループの孫正義会長は11月に米ニューヨーク・タイムズのカンファレンスで「ワクチンが開発されているというが新型コロナウイルスの再流行で今後2~3月以内に最悪の事態は発生しかねない。最悪の状況に備え積極的に資産を売却した」と明らかにした。彼は半導体設計会社であるARMホールディングスなどの資産売却を通じ現在600億ドル規模の現金を手にした状態だ。
実際に世界的なコロナ流行悪化により5大グループ主要系列会社34社が営業で現金を創出する営業活動キャッシュフローは7-9月期に15兆7000億ウォンで前四半期より33.0%、前年同期より11.4%減った。
その渦中にも未来成長に向け資産を買い入れ設備投資に資金を使う投資活動キャッシュフローは19兆6000億ウォンで4-6月期より75.1%、前年同期より18.9%増えた。結局既存事業だけでの現金創出が困難になる中で、未来市場を逃さないために借入であれ資産・株式売却であれ社債発行であれ、全力でかき集めて現金を調達している様相だ。
◇現代自動車・SK・ロッテなど「現金確保せよ」
現代自動車グループは3月に現代・起亜自動車など全系列会社に現金性資産確保の指針を下した。コロナ危機による最悪の状況に備えるためだ。現代自動車はすでに上半期に6000億ウォンの社債を含め来年初めまで4000億ウォンの社債を追加で発行し資金を確保する予定だ。
主力である流通業が新型コロナウイルスの直撃弾を受けたロッテグループも全方向的に資金をかき集めている。ロッテ持ち株は4月の2000億ウォンに続き8~9月に2800億ウォン、ロッテケミカルも7月に3000億ウォンの社債を発行した。ロッテ七星飲料は最近現金確保に向け414億ウォンに達する自己株式を売却したが、これをロッテ持ち株が買い受けて救済者の役割をしたりもした。ロッテは最近百貨店、マート、アウトレットなどをロッテリートに売却し7300億ウォン規模の現金を調達した。業界関係者は「コロナで非対面事業が急浮上するが、ロッテは事実上すべてオフライン店舗事業だ。確保した現金でeコマース、物流センターなどに投資しようとする希望が大きい」と話した。ロッテケミカル系列会社のロッテ精密化学がバッテリー核心素材企業である斗山ソルスに出資したのも同じ脈絡だ。
◇株式売却・IPOなど続きそう
SKグループは崔泰源(チェ・テウォン)会長が「あらゆる資源を動員して現金を調達せよ。現金がなければ適当な売り物件が出てきても対応できない」と強調した状態だ。豊富な資金力を基に10月にインテルのNAND事業部門を買収したSKハイニックスが良い例だ。SKイノベーションは9月に4000億ウォン規模の社債を発行し、子会社であるSKルブリカンツ株の一部売却を推進中だ。SKグループの新成長動力に挙げられるバッテリー事業にさらに積極的に投資するためだが、SKイノベーションは来年初めに子会社のSKIEテクノロジーの企業公開(IPO)も準備中だ。
韓国経済研究院のホン・ソンイル経済政策チーム長は「主要企業が新型コロナウイルス後の市場に備えて投資を再開しているが、新型コロナウイルスがさらに長引く場合、企業の収益性が落ち投資余力も次第に低くなるだろう」と話した。続けて「企業が確保した現金を未来競争力を左右する設備投資や研究開発に使えるよう、各種規制改善と研究開発税額控除など制度的支援が必要だ」と強調した。