政治対立の陰に隠れるセウォル号遺族の苦しみ

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政治対立の陰に隠れるセウォル号遺族の苦しみ

 多くの若者の命が奪われた衝撃は、韓国社会に強い処罰感情を生んだ。安全を無視した無理な船体改造や運航を行った船会社、結果的にそれを見逃した監督当局に韓国の人々は怒った。

 乗客を見捨てて脱出した船長は殺人罪で無期懲役、最初に駆けつけたものの救助活動をできなかった巡視艇の艇長は懲役3年がそれぞれ最高裁で確定した。

 こうした処罰感情は社会に共有されたが、一体感をもたらすことにはならなかった。進歩派は朴政権の初動に問題があったと攻撃し、保守派はそれに反発したのである。

 朴政権による原因調査と責任追及を認めないという声は、進歩派の間に今でも強い。進歩派である文在寅政権は昨年、最高検察庁の傘下に「セウォル号惨事特別捜査団」を設置。捜査団は今年2月、海洋警察庁の事故当時の長官ら幹部11人を業務上過失致死の罪で在宅起訴した。文政権与党からは、来年4月に成立する業務上過失致死罪の時効を延長する特別立法をすべきだという主張まで出ている。

 こうした理念対立の中で忘れられがちなのが、当事者の苦しみだ。日本で11月27日公開の韓国映画「君の誕生日」は、そのことを改めて思い出させてくれた。

 政争の具となっているからか、セウォル号を題材とした映画はこれまで政治的色彩の濃いドキュメンタリーばかりだった。この映画は事故から5年となった昨年春、初めての「物語」として韓国で公開された。

 描かれているのは、最愛の息子を失った家族が壊れそうになりながら、なんとか立ち直っていく姿だ。補償金を受け取るかどうかを巡る遺族間の分断や、補償金をもらうことに向けられる好奇心とねたみの入り交じった世間の視線も描かれる。日本社会でも同じようなことがあるのではないかと思わされ、ハッとさせられる場面だ。

 心の折れたまま日々を過ごした母親は結局、周囲の助けを得て現実を受け入れる。その舞台となるのが、亡き息子の友人たちが集まる「誕生会」だ。誕生会は実際に開かれてきたもので、イ・ジョンオン監督はボランティアとして手伝ったのだという。イ監督は「どれほど大きな心の傷を残したか描くことによって、真相究明が必要だと伝えられるのではないか」と考え、誕生会を素材とした映画化に挑戦したという。

 新型コロナウイルス感染拡大の中、愛する人に別れを告げる葬儀のあり方と意味についても考えさせられた。【論説委員・澤田克己】

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