ドナルド・トランプ米大統領の陣営と共和党全国委員会は4日、大統領選以降に計2億750万ドル(約216億円)の献金を集めたと発表した。民主党のジョー・バイデン次期大統領の当選を争う法廷闘争のために集められたものだが、使い道はそれに限定されていない。
11月3日の大統領選に先立つ10月以降でみると、トランプ陣営は5億ドル近くを集めたという。
連邦選挙委員会(FEC)によると、この間にバイデン陣営が集めた献金は1億1200万ドル。
トランプ氏は今なお選挙に大掛かりな不正があったと証拠を提示することなく主張し、圧勝したのは自分だと言い続けている。トランプ陣営やトランプ氏の支持者たちはペンシルヴェニア州やジョージア州などで、票の無効化などを求めて提訴を繰り返しているが、敗訴が続いている。
トランプ陣営のビル・ステピアン選対委員長は、多額の献金が集まったことで「トランプ大統領は引き続き、この国の各地で、腐敗した選挙プロセスをきれいにするための闘いが続けられる」とコメントした。
選挙後のトランプ陣営はメール・アドレスを登録した人たちに繰り返し、「公式選挙防衛基金」に寄付するよう呼びかけ、「結果を守り、選挙後も闘い続ける」よう求めている。
しかし、その文書では、集まった資金のほとんどはそれ以外の目的に使われると細かい文字で書かれている。
大統領選の結果については4日夜、カリフォルニア州政府がバイデン氏勝利の選挙結果を認定した。トランプ陣営が結果を争っているジョージアやペンシルヴェニアなど複数の激戦州でもすでに、知事がバイデン氏勝利の結果を認定している。
AP通信によると、カリフォルニア州の認定によって、選挙人538人のうちバイデン氏が279人以上の票を獲得し、正式に当選することが確実になった。選挙人団は12月14日に投票する。
トランプ氏は引き続き選挙結果を争い、選挙人の投票を変えようとペンシルヴェニア州やジョージア州で州議会や知事に働きかけているが、選挙結果が変わる見通しは少ない。
全国的な得票数は直接、大統領を決めるものではないが、今回の選挙ではバイデン氏の得票数がトランプ氏を700万票以上、上回った。
トランプ氏側近のビル・バー司法長官は1日、大統領選の勝敗を覆すような大掛かりな不正があったという証拠を、司法省はこれまでのところ発見できていないと述べた。
その前には米国土安全保障省のサイバーセキュリティー・インフラセキュリティー庁(CISA)が、不正の証拠はないという報告書を発表。今回の大統領選は「アメリカ史上最も信頼できるものだった」と述べていたCISAのクリス・クレブス長官はその後、トランプ氏に解任された。
バイデン次期大統領は来年1月20日に、就任する予定。
■<解説> アンソニー・ザーカーBBC北米担当記者
トランプ氏は大統領選の結果を覆そうと、係争を続けている。しかし、各地の法廷は次々とトランプ陣営や支持者の訴えを棄却し、各州の知事は選挙結果を認定している。
そのため、トランプ氏の闘いの見通しは決して明るくない。しかし同時に、集金という意味では非常に成功している。
大統領と共和党は選挙以降、計2億750万ドルを集めた。集金の名目は、法廷闘争資金にするためだった。しかし資金の大半は大統領の個人的な政治活動委員会と、共和党の資産になる。
今年の大統領選や議会選による赤字を埋めようとする共和党全国委員会にとっては、ありがたい資金注入となるだろう。大統領もこの資金をもとに、来月の退任以降も相当な政治力を維持できることになる。
巨額の政治資金を得たことで、トランプ氏は今後の選挙で好きな候補を応援することもできるし、自分の集会を開催することもできる。交通費に使うこともできるし、本気で2024年の大統領選に再挑戦するならば、そのためのスタッフを雇うこともできる。
2020年大統領選の結果を実際に覆すのはそろそろ手詰まりかもしれないが、最後まで闘い続けるだけの理由は十分にあるというわけだ。
(英語記事 Trump raises $200m for post-election legal battles)