韓国産業界が20日(現地時間)のバイデン米大統領就任による得失分析と戦略の準備に忙しくなった。バイデノミクスは大規模な景気浮揚、保護貿易の緩和、同盟主義の復活、環境重視を特徴とする。政府が主導的な役割をするという点で「大きな政府」に向かう。減税と規制緩和を通じて民間の投資余力改善に焦点を合わせた「トランプノミクス」とは180度異なる戦略だ。
バイデン氏は新型コロナ事態の克服を就任後の最初の課題としている。克服手段として1.9兆ドル(約200兆円)規模の景気浮揚策を主張している。景気浮揚で米国の消費が増え、グローバル貿易が回復すれば、韓国の対米輸出が増加する可能性がある。ただ、ドル安基調は輸出企業の価格競争力を弱める要因になり得る。
キム・サンボン漢城大経済学科教授は「輸出市場で競争する日本円、中国人民元も共に値上がりすることが予想され、ウォン高になっても韓国だけの弱点になるとは考えにくい」としながらも「ウォン高ドル安が長期化する場合に対応した経営戦略を立てる必要がある」と助言した。
成太胤(ソン・テユン)延世大経済学部教授は「大規模な浮揚策で米国実体経済が速やかに回復して物価が上がれば、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに踏み切る可能性がある」と予想した。
通商政策による気象図は「晴れ」に近い。バイデン氏が自国中心の保護貿易主義と2国間交渉戦略から抜け出す場合、輸出と通商環境は改善するとみられる。前任のトランプ大統領特有の不確実性が消えるという点も大きい。
現代経済研究院は9日、報告書「バイデノミクスの特徴と示唆点」で、「バイデノミクスを推進すれば、韓国の輸出増加率が0.5-2.2%ポイント、経済成長率は0.1-0.4%ポイント追加で上昇する可能性がある」と予測した。
産業別にみると両面性がある。バイデン氏が「環境」にオールインすると公言しただけに、電気自動車バッテリー、再生可能エネルギー事業には新しい機会が開かれる。それだけ輸出関連環境規制を強化する予定という点は負担だ。情報技術(IT)分野の競争力を強化すると明らかにしただけに、IT需要も増える可能性がある。しかし反独占規制の拡大、法人税の強化などが影響が懸念される。バイオ・ヘルスケア分野では新型コロナ対応による需要を予想しているが、医薬品価格制限を推進する場合は収益性の悪化が懸念される。
バイデン時代にも変わらない点がある。対中国牽制基調だ。韓国の対中国貿易依存度が25%(輸出入比率)にのぼるだけに、米中通商摩擦イシューが続けば輸出への影響が予想される。