日産の革新的なハイブリッドシステムであるe-POWERは、発電専用エンジンと駆動用モーターを組み合わせた独自のパワートレーンとして、日本国内はもとより欧州市場でも高い評価と人気を獲得しています。このe-POWERが、さらなる燃費性能と静粛性の向上を目指し、「第3世代」へと重要な進化を遂げました。
現在、日本の日産ラインアップの中核を担うノートやセレナに搭載されているe-POWERは、エンジンで発電した電力を用いてモーターを駆動し、タイヤを直接動かすシステムです。エンジンはあくまで発電に特化しており、車両の走行を直接担うのはパワフルなモーターです。現行システムでは、ノートやキックスに1.2L直列3気筒NA、セレナに1.4L直列3気筒NA、エクストレイルには可変圧縮比技術を用いた1.5L直列3気筒ターボエンジンが発電用として搭載されています。
新開発1.5Lターボエンジンが牽引する第3世代e-POWER
今回「第3世代e-POWER」として新たに開発されたのは、直列3気筒1.5Lターボエンジンを中核とするシステムです。この新世代e-POWERは、欧州市場向けの新型キャシュカイや北米向けの新型ローグに先行搭載され、日本国内においては2026年度に登場が計画されている新型エルグランドへの搭載が予定されています。
特筆すべきは、この新開発エンジンが既存のエクストレイル等に搭載されているKR15DDT型とは根本的に異なり、ボア×ストロークや燃焼室形状まで新規設計されている点です。さらに、現行の1.5Lターボエンジンが採用している可変圧縮比機構が意図的に採用されていません。これは、e-POWER専用の発電機として、効率を最大限に引き出すためのゼロベースでの設計思想を明確に示しています。
エンジンが直接タイヤを駆動しないe-POWERの特性を最大限に活かし、一般的な走行用エンジンに求められる低速トルクや滑らかなドライバビリティ、高回転域の性能といった要素を度外視することで、発電効率の最適化に全力を注ぐことが可能となりました。
燃費と静粛性を高める革新的な技術
詳細なスペックはまだ完全に明らかにされていませんが、新開発1.5Lターボエンジンは、超ロングストローク設計を採用し、吸気時に効果的なタンブル流を生成することで、超リーンバーン運転を実現しています。また、大量のEGR(排気再循環)を導入することで、吸気損失や冷却損失を低減し、熱効率の大幅な向上を図っています。
開発陣によると、この新エンジンは常用域のエンジン回転数を従来型よりも低いゾーンに設定しており、最高回転数も抑えられています。エンジン回転域を低く抑えることで、ピストンリングの張力を弱めることが可能になり、摺動抵抗(摩擦)を大幅に低減しています。さらに、バルブスプリングの反力も弱められており、これもエンジンが回転する際の自己損失(フリクションロス)の低減に大きく貢献しています。これらの技術革新により、第3世代e-POWERは、燃費効率とエンジンの作動時の静粛性の両面で飛躍的な向上を達成しています。
欧州市場でデビュー予定の新型日産キャシュカイ。このモデルに第3世代e-POWERが搭載される
e-POWERの未来:新型エルグランドへの期待
これらの技術的なブレークスルーは、今後の日産電動化戦略、特にe-POWER搭載車の競争力を大きく左右します。欧州や北米市場での展開に加え、日本市場における新型エルグランドへの搭載は、大型ミニバンというカテゴリーにおいてもe-POWERの低燃費と優れた走行性能、そして静粛性というメリットを享受できることを意味します。
第3世代e-POWERの導入は、日産が追求する電動化技術の進化を示すものであり、ユーザーにとってさらに効率的で快適な移動手段を提供することに繋がります。新型エルグランドを含む今後のe-POWER搭載車が、この新技術によってどのような体験をもたらすのか、大いに注目されます。