サムスン電子が米国で半導体工場新増設を検討するとウォール・ストリート・ジャーナルなど外信が報じた。写真は米テキサス州オースティンのサムスン電子半導体工場。[写真 サムスン電子]
サムスン電子が米国で半導体工場の新設・増設を検討するとウォール・ストリート・ジャーナルなどが最近報道した。同紙は22日、「サムスン電子が170億ドルをかけてテキサス州、アリゾナ州、ニューヨーク州に半導体生産ライン建設を検討している」と伝えた。ブルームバーグはこの日「サムスン電子が100億ドル以上を投じてテキサス州オースティン工場にファウンドリー(委託生産)ラインを増設する計画」と報道した。
◇サムスンは「投資規模・時期決定されたものはない」
サムスン電子は「投資規模や時期は決定されていない」として慎重な反応だ。だが同社内外では「いま投資しなければ競合企業に永遠に押されかねない。可能性は大きい」という分析が出ている。第5世代移動通信(5G)と人工知能(AI)、自動運転、クラウドなどの普及が拡大し、世界の半導体市場はスーパーサイクルと呼ばれる超好況を予告した状態だ。インテルがファウンドリーのパートナーとしてサムスン電子と手を組む可能性も大きくなった。
テキサス州の州都であるオースティンはITの象徴であるシリコンバレーに対し「シリコンヒルズ」と呼ばれるほど成長した。アップルやゼネラルモーターズ(GM)の研究所が進出し、オラクルが本社を移すと発表した。テキサス州には個人所得税と法人税がなく税金負担が少ない。
ソウル大学半導体共同研究所のイ・ジョンホ所長は「ファウンドリー大手2社のサムスン電子には北朝鮮リスクが、台湾TSMCには米国と貿易対立中の中国リスクがある。インテル、エヌビディア、クアルコムのAIチップや加速処理装置(APU)などが安定的に生産されるには米国の立場では自国内生産基地が必須」と説明した。
◇バイデン政権「米国内生産」に税制優遇拡大
最近就任したバイデン米大統領は前任のトランプ前大統領が推進した海外進出企業の本国帰還(リショアリング)政策基調を維持している。彼の大統領選挙公約は「米国内生産」(Made in All of America)だった。米国に投資する外国企業に税額控除の優遇を拡大する内容の法案も発議されている。
業界では半導体工場1カ所を通じ5000~7000件の雇用創出を予想する。ユーティリティ、装備、安全など間接部門を含めて最大2万件ほどの雇用が創出されると推定する。
ブルームバーグはサムスン電子がオースティン工場の新規ラインで3ナノメートル(1ナノメートル=10億分の1メートル)以下の半導体チップを生産する計画だと報道した。インテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は最近の業績発表時に「インテルは独自の工場で製造の大部分を維持し、現在より多くの外部施設を利用するだろう」と話した。インテルの「外部施設」としてはサムスン電子とTSMCが挙げられる。世界でこの2社だけが10ナノメートル以下のチップ生産が可能だ。
◇サムスン、半導体生産比率韓国が80%以上…「コリア・エクソダスの懸念ない」
TSMCはすでにアリゾナ州に作る5ナノメートルプロセスのファウンドリーへの120億ドルを含め2030年までに最大280億ドルを投資すると発表した。そこで専門家らは「3ナノメートルプロセス」に注目する。ナノプロセスが高度化、すなわち回路線幅が細くなれば集積度が高まり、低電力・低発熱が可能になる。市場調査会社のトレンドフォースによると、昨年末基準でサムスン電子のファウンドリーシェアは17%でTSMCの54%を大きく下回っている。
サムスン電子関係者は「最新プロセスである3ナノメートルや5ナノメートルフルサイズならば30兆ウォンは必要だろう」と予測した。敷地と建物確保、用水・電気・ガス設備、クリーンルーム工事などだけで10兆ウォンがかかる。ここに1台当たり数千億ウォンに達する装備数十台を入れなければならない。成均館(ソンギュングァン)大学システム半導体工学科のハン・テヒ教授は「事実5ナノメートル以下の半導体プロセスで11兆ウォンはそんなに大きな金額ではない。実際にはこれよりより多くの金額が必要とされるだろう」と推定した。また別のサムスン関係者も「新しい部品・装備が適用されれば最小30兆ウォンかかるだろう」と話した。
成均館大学半導体システム工学科のチョン・ジョンフン教授は「サムスン電子とインテルは互いに長期的協力関係を図る必要があった。こうした状況でサムスン電子の米国内半導体工場増設は適切な選択」と診断した。
サムスン電子は携帯電話と家電・ITなど主力製品の生産基地をベトナムや中国などに移した。ただ半導体生産は韓国の割合が80%以上だ。いわゆる「コリア・エクソダス」が始まるのではないかとの指摘も出る。漢陽(ハニャン)大学融合電子工学部のパク・ジェグン教授は「そうではない」と話す。彼は「半導体企業は顧客に鋭敏だ。いまは市場を見て投資するだろう」と評価した。韓国半導体産業協会のアン・ギヒョン常務も「サムスン電子とTSMCが世界需要を引き受けるという戦略で理解しなければならない」と話した。
ただインテルとの交渉が決裂する場合には「過剰投資」というリスクもある。パク教授は「平沢(ピョンテク)第2工場に10兆ウォン台のファウンドリーラインを建設している状況でどのように同時に大規模投資を進めるのかが課題として残る」と話した。