昨年7月14日にオンラインで開かれたロッテグループ役員会議で辛東彬会長が発言している。辛会長は各系列会社社長団に果敢な事業ポートフォリオ調整を通じた革新を求めた。[写真 ロッテグループ]
ロッテグループがバイオベンチャー企業のエンジーケム生命化学と組んでバイオ市場に参入する。1948年の設立から73年で初めてバイオ産業に挑戦状を出したのだ。新薬開発だけでなく委託生産(CMO)事業を集中育成するというビジョンも提示した。
22日の経済界とバイオ業界によると、ロッテホールディングスはKOSDAQ上場企業のエンジーケム生命化学の株式一部を取得し2大株主に上がる案を協議している。エンジーケム生命化学は筆頭株主であるソン・ギヨン会長ら特殊関係人の持ち分が18.96%だ。ロッテは筆頭株主の保有株式の一部取得または、第三者割当方式の有償増資参加などにより株式を確保するという。
ロッテはエンジーケム生命化学と別途のジョイントベンチャーも設立する予定だ。投資金額はジョイントベンチャーと株式取得など合わせて最小1500億ウォン以上になる見通しだ。投資はグループのコントロールタワーであるロッテホールディングスが引き受ける。具体的な投資規模と時期は26日に開かれる株主総会前後に決める。化学系列会社のロッテケミカルも持ち分投資家として参加する予定だ。
韓国バイオ協会のイ・スンギュ副会長は「CMO事業から始めて領域を拡張しているサムスンバイオロジックスの前例に従う可能性が高い」と予想した。
業界ではバイオ分野に先に進出したサムスンとSKの成功が刺激剤になったとみている。両グループの系列会社であるサムスンバイオロジックスとSKバイオサイエンス、SKファームテコなどは半導体と化学分野で積んだ製造業ノウハウと果敢な投資で業界トップ圏の会社に成長した。
エンジーケム生命化学は1999年に設立された新薬開発会社だ。鹿茸に入っている成分を化学的に合成した新薬EC-18を開発中だ。この物質は新型コロナウイルスと好中球減少症、口腔粘膜炎治療剤で米国臨床第2相を進めている。また、原料医薬品(API)を生産する工場も稼動しており、ロッテがCMO事業に進出するための最適なパートナーという分析が出ている。
◇新薬・CMO事業同時に育てる
「昨年と何か変わったというのですか」。
ロッテグループ系列会社社長がこのところ最も恐れている言葉だ。「辛東彬(シン・ドンビン、重光昭夫)ロッテグループ会長の口からこうした発言が出てきたということは激怒に近い」というのがロッテホールディングス関係者の説明だ。特に1月13日の社長団会議で果敢な投資で新たな収益源を探せという辛会長の注文が出て変化の動きがさらに速くなった。ロッテグループがバイオ産業に挑戦状を出したのはこうした背景からだ。
◇ベンチャーと組んでバイオに参入
ロッテグループがバイオ産業進出を初めて検討したのは昨年10月ごろだ。辛会長が「ロッテの10年成長を牽引する新たな中長期計画を立ててほしい」と各系列会社社長に求めてからだ。「2本柱であるロッテショッピングとロッテケミカルの衝撃的水準の上半期の成績を受け危機感が広がっていた」ということがロッテホールディングス関係者の話だ。ロッテショッピングは昨年上半期に8兆1226億ウォンの売り上げと535億ウォンの営業利益を上げるのにとどまった。前年同期比でそれぞれ8.8%と82.0%の減少だ。結局昨年の営業利益は前年比19.1%減の3461億ウォンにとどまった。ロッテケミカルもやはり昨年の売り上げが12兆2230億ウォンで19.2%減、営業利益が3569億ウォンで67.8%減となった。
危機克服に向けグループのコントロールタワーに当たるロッテホールディングスは昨年下半期から世界的コンサルティング会社と契約を結び新事業進出に向けた多様な案を模索してきた。ロッテはバイオ事業が景気に敏感な流通と化学中心ポートフォリオの弱点を補完できるとみている。韓国バイオ協会のイ・スンギュ副会長は「バイオは景気にあまり敏感でない分野の上に未来成長の可能性も高い。該当分野の専門性が高くなくても強大な資本力と化学事業の生産ノウハウを結合しシナジーを出すことができる」と話した。
◇サムスンとSKの成功事例に刺激
2015年から韓美薬品の相次ぐ技術輸出で韓国のバイオ産業は全盛期を迎えた。サムスン、LG、SKなどが長く新収益事業として育ててきたバイオ事業が光を見始めた。サムスンバイオロジックスは世界最大のバイオ医薬品委託生産(CMO)企業に成長し、SKバイオファームは欧米で新薬許可を受け世界市場に進出した。SKバイオサイエンスはアストラゼネカやノババックスなどから新型コロナワクチンの委託生産を獲得し世界のバイオ業界の「シンデレラ」に浮上した。サムスンバイオロジックスとSKバイオサイエンスは半導体と化学分野で蓄積した製造業のノウハウを組み合わせて一気に世界市場の主役になった。
バイオ・製薬系列会社がないロッテグループはこれらをうらやましげに見るほかなかった。ロッテグループは健康機能食品を生産するロッテ製薬があったが2011年にロッテ製菓に買収合併させ製薬・バイオ分野に本格進出する機会を逃した。
SKグループが相次ぐバイオ系列会社の上場で投資金回収に成功したのもロッテグループには刺激剤になったという分析が出ている。18日に上場したSKバイオサイエンスと昨年7月に上場したSKバイオファームの時価総額は合わせて19兆2389億ウォンだ。ロッテケミカルなどロッテグループ上場系列会社9社の全時価総額と変わらない水準だ。
◇エンジーケム選択した理由は
ロッテグループがバイオ事業進出パートナーとしてバイオベンチャーのエンジーケム生命化学を選択した理由は新薬開発とCMO事業を同時にできるという判断からだ。エンジーケム生命化学は鹿茸から抽出した成分を化学的に合成して開発した新薬候補物質(EC-18)を開発中だ。抗がん剤だけでなく非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、口腔粘膜炎、新型コロナウイルスなどの治療剤にも期待を受けている。米食品医薬品局(FDA)の許可を受け臨床第2相を進めている候補物質は新型コロナウイルス治療剤をはじめ4種だ。ここに独自の工場を置いて原料医薬品CMO事業もしている。造影剤、抗凝固剤など40種余りの原料医薬品を生産中だ。
バイオ業界関係者は「新薬開発とCMO事業を同時にするバイオ会社はあまりない。両分野で長く基盤を固めてきたエンジーケム生命化学が適任に選ばれたようだ」と話した。