LGエネルギーソリューションとGMが米オハイオ州に建設中の電気自動車用バッテリー合弁法人工場。[写真 LGエネルギーソリューション]
「米国の労働者と米国の自動車産業の勝利だ」。
LGエネルギーソリューションとSKイノベーションが713日にわたり続けてきた電気自動車用バッテリーの営業秘密侵害訴訟を終結させると発表した11日、バイデン米大統領はこうした声明を出した。LGとSKも訴訟終了合意に合わせて発表した共同声明で「米バイデン政権が推進しているバッテリーサプライチェーン強化と親環境政策に共同で努力することにした」と明らかにし歩調を合わせた。韓国に本社を置く2大企業の合意に米国大統領が出てきて自国の勝利だと評価する理由は何か。この背景には米国中心に生産・買い入れ網を再編しようとするバイデン政権の核心政策で米国製品を優先する「バイ・アメリカン」がある。
これまで米国内ではLGとSKの紛争により米国内の自動車バッテリー供給に支障が出てSKジョージア工場の撤退につながりかねないとの危機感が大きかった。米大統領が直接乗り出した理由だ。バイデン大統領は本音も示した。彼はこの日の声明で「われわれはさらに強力で多角化し弾力性のある米国基盤の自動車バッテリーサプライチェーンが必要だ。良質の雇用をまさにここ米国で創出し、未来の雇用を創出するための土台を用意する作業」と強調した。
韓国の電気自動車用バッテリー業界の内心は複雑だ。米国は逃すことはできない電気自動車市場であり戦略的要衝地だ。サムスンSDIも米国市場進出を推進している。12日の財界によると、サムスンSDIは電気自動車用バッテリーセル工場を2022年ごろに着工し2025年7月ごろ完工することを検討している。投資地域としては現在運営中であるミシガン州のバッテリー組み立て工場を拡大する案と米南部のサンベルトをめぐり得失を計算中という。サムスンSDIは早ければ下半期に米国内でのバッテリー投資計画を確定発表する方針だ。LGエネルギーソリューション、SKイノベーション、サムスンSDIの韓国バッテリー大手3社が米国で本格的な市場争奪戦に突入する格好だ。
ここに海外のバッテリー企業も米国の電気自動車用バッテリー市場競争に加勢している。パナソニックはテスラと組んで次世代バッテリー開発に乗り出した。パナソニックは米国で電気自動車用バッテリー工場増設も進めている。パナソニックはテスラを主要顧客に持ちバッテリーを生産しているが、今後米国の自動車メーカーにサプライチェーン拡大を狙う可能性が高い。これに対しバッテリー業界関係者は「米バッテリー市場の競争激化で低価格受注が続けば出血競争に変質しかねない」と話した。
もちろん反対の解釈もある。韓国企業同士の善意の競争が新たな電気自動車用バッテリー受注拡大につながるだろうという見通しだ。メリッツ証券アナリストのチュ・ミンウ氏は「米国内の電気自動車用バッテリー工場はパナソニックとテスラのジョイントベンチャー工場を除けば事実上韓国企業の独擅場。米国内の工場保有が新規受注と工場増設加速化につながるだろう」と予想した。中国のバッテリー企業不在も韓国企業には好材料だ。電気自動車用バッテリーでシェア世界1位の中国CATLは2019年から米国の電気自動車用バッテリー市場進出機会を虎視耽々とうかがっているが、米中対立の谷間を越えられずにいる。
大林(テリム)大学自動車学科のキム・ピルス教授は「LGとSKの合意は韓国のバッテリー競争力強化に肯定的。米国と欧州を中心に韓日中バッテリー企業間の競争構図はさらに激しくなるだろう」と予想した。
問題は米国の「バイ・アメリカン」戦略が電気自動車用バッテリーを超え全産業に拡大する可能性が大きいという点だ。12日に対外経済政策研究院(KIEP)が発刊した世界経済フォーカス報告書によると、バイデン政権の調達政策はトランプ政権の時よりさらに強力だという評価が出ている。
KIEP貿易投資政策チームのパク・ヘリ専門研究員は報告書を通じ「バイデン政権の(バイ・アメリカン関連)政策はトランプ政権当時より具体的・体系的に履行されている」と分析した。まずトランプ政権当時に50%から55%に引き上げた自国製品認定基準をさらに上方修正することにした。最終物品価格を基準として一定部分(55%以上、鉄鋼は95%以上)まで米国内で生産しなければ米国製と認定しないという意味だ。米国製品に対する価格優待率もトランプ政権の12%から2倍を超える20~30%に引き上げることにした。また、単純に米国で生産した素材・部品が価格でどれだけの割合を占めるかを反映するだけでなく、米国で生産され雇用創出にどれだけ寄与したのかも認証項目に含む。
パク研究員は報告書で「バイデン政権のバイ・アメリカン政策は表面的にあまり表れていないが、過去の関連措置の中で最も強力と評価される。米国はバイ・アメリカン政策を推進しながらすでに締結された自由貿易協定(FTA)などとの衝突が発生する場合には再協議まで考慮しているだけに、韓国もこれに対する備えが必要だ」と指摘した。