近年、働き方の多様化が進み、副業への関心が高まっています。収入増加やスキルアップを目指して副業を始める人が増える一方で、「勤め先に副業を知られてしまうのではないか」という不安を抱える会社員も少なくありません。特に「住民税額の変化でバレる」という話を耳にすることがあります。本記事では、なぜ住民税から副業が発覚する可能性があるのか、その仕組みと、発覚リスクを減らすための確定申告上の注意点について解説します。
副業所得による住民税の増加を心配する会社員のイメージ
住民税が副業の存在を会社に知らせる仕組み
副業で所得を得た場合、それに伴って住民税額が増加し、この変化が会社に副業を知られるきっかけとなることがあります。住民税は、前年の1月1日から12月31日までの総所得(本業の給与所得や副業による所得など全てを合算したもの)を基に計算され、翌年6月から徴収が開始されます。会社員の住民税は、通常、給与から天引きされる「特別徴収」という方法で納付されます。
会社は、毎年5月~6月頃に市区町村から送付される「給与所得等に係る特別徴収税額決定通知書」を通じて、従業員ごとの住民税額を把握します。例えば、本業の年収が300万円で住民税が年間約10万円だった人が、副業で年間50万円の所得を追加で得ると、合算された所得に基づいて住民税は約15万円になる、といったように税額が増加します。経理担当者が、例年と比較して不自然に住民税額が増えていることに気づき、他の収入源(副業)の可能性を疑うというのが、住民税から副業が発覚する典型的な仕組みです。
なぜ住民税でバレやすいのか? 通知書の仕組みと注意点
副業所得が本業の給与所得に合算されて住民税が計算されるため、副業をしていない場合と比べて住民税額が増加することは避けられません。同じ部署や役職、勤続年数で給与水準が近い同僚と比較して、自分の住民税額だけが明らかに高い場合、経理担当者が差額に疑問を持ち、副業の可能性を推測する十分な理由となり得ます。
特に注意が必要なのは、副業がアルバイトやパートなどの「給与所得」である場合です。副業先も法的に給与支払報告書を市区町村に提出する義務があり、この情報が本業の会社の住民税額通知書に反映されることがあります(住民税額のみが合算されるため、具体的な副業先の名称が通知されるわけではありませんが、税額の増加自体が疑念を招きます)。
副業を会社にバレにくくするための確定申告の「コツ」と限界
副業の事実を会社に知られるリスクを減らすための対策の一つとして、「住民税の普通徴収」を選択する方法があります。これは、副業で得た所得にかかる住民税分を、給与天引きではなく自分で直接納付するという方法です。
確定申告を行う際に、申告書Bの第二表にある「住民税に関する事項」欄で、「自分で納付(普通徴収)」に丸を付けます。これにより、本業の会社には本業分の所得に基づく住民税額のみが通知され、副業による税額増加分を知られるリスクを減らせる可能性があります。
ただし、この方法は万能ではありません。前述のように、副業がアルバイトなどで「給与所得」に該当する場合、原則として副業先が特別徴収を行う義務を負うため、自分で普通徴収を選択することが法律上できません。また、一部の自治体では、会社員など給与所得者の普通徴収への切り替えを制限している場合もあります。したがって、普通徴収を選択できるかどうかは、お住まいの市区町村の条例や運用によって異なるため、事前に役場へ確認することが不可欠です。
さらに、普通徴収を選択した場合は、自宅に届く納付書を使って、通常年4回に分けて決められた期限までに自分で住民税を納付する手間と責任が発生します。納付期限を過ぎると延滞金が発生する点にも注意が必要です。
副業が会社にバレるかどうかは、住民税の仕組みだけでなく、会社の就業規則や、税務処理の正確さなど、複数の要因が絡み合います。住民税の普通徴収は一つの対策ですが、その適用可能性には限界があることを理解しておくことが重要です。