シンガポール天然ゴムの先物取り引き価格の推移。昨年8月から急に上昇した。[写真 ychart]
天然ゴムの価格が高騰している。新型肺炎でラテックス手袋の需要が急増したうえに重装備車両用タイヤの需要増加が重なった結果だ。さらに、天然ゴムを栽培する東南アジア地域の気候変動で供給量が大きく減って価格が急に上昇している。特に、自動車業界では「半導体に続き、ゴムの需給まで心配している」という懸念の声が上がる。
天然ゴムの価格が上昇したのは昨年中旬からだ。昨年8月から上がり始めたシンガポール天然ゴムの先物価格は今年3月末を基準に1ポンド(0.45キログラム)当たり1.082ドル(約116円)を記録した。天然ゴムの価格が1年前である昨年3月末までは1ポンド当たり0.613ドル水準だった。1年間天然ゴム価格が2倍近く上がったわけだ。
天然ゴムが先物市場で取り引きされるのは独特の特性のためだ。適切に堅くて柔軟でありながら防水も可能な天然ゴムを完ぺきに代替できる材料はまだない。石油化学技術の発展で合成ゴムが生産されているが、耐久性の側面で天然ゴムには及ばない。合成ゴムが天然ゴムを市場から排除することができない理由だ。トラック・バスのような大型車両用タイヤやラテックス手袋、スニーカーなどは依然として天然ゴムをベースに生産する。
最近、天然ゴム価格の上昇を主導するのはタイヤ業界だ。政府の主導で各国の設備投資が加速化し、トラック・建設用タイヤ需要が急に増加している。欧州の代表的なタイヤ企業「ミシュラン」の今年2月トラック用タイヤ販売(累積基準)は新車基準で前年同期比23%増加した。交替用タイヤの場合、前年同期比16%が増えた。
さらに、大型タイヤを搭載する建設用重装備の販売量も中国を中心に急速に増えている。重装備業界によると、昨年中国市場で掘削機の販売量は29万2000台で、2008年以降最も多かった。ハナ金融投資のアナリスト、ユン・ジェソン氏は「世界的な物流量の増加とインフラ投資の増加にともなうトラック用タイヤの需要増加が天然ゴムの価格上昇の原因」とし「最近、自動車業界では半導体に続き、天然ゴムの不足に対する懸念の声が上がっている」と話した。
気候変動と寡占も天然ゴムの価格上昇をあおる要因だ。タイ・マレーシア・インドネシアが世界天然ゴムの80%を生産している。だが、2019年タイで始まったゴムの木の疾病で耕作地が急速に減少している。天然ゴムは「パラゴムノ(hevea)」と呼ばれるゴムの木を通じて生産するが、これを代える作物がまだ開発されなかった。東南アジアの耕作地が減れば、天然ゴムの価格につながるほかはない理由だ。
韓国生命工学研究院のユ・ビョンテ責任研究員は「ゴムの木でのゴムを採取するまで6~7年がかかるので需要を予測することができなければ、価格変動が激しくならざるを得ない」として「3大主なゴム生産国が協議を通じてゴム生産量と輸出量を減らしたのも天然ゴムの価格が高まった原因」と分析した。英国公営BBCも先月驚くべき材料だが、不足した材料(The wonder material we all need but is running out)という特集記事を通じて「世界的な天然ゴムの不足現象が現れる可能性がある兆候が所々で現れている」として「開発途上国の経済が成長すれば天然ゴムの需要は今後より一層増加するほかはない」と見通した。
市場では天然ゴムの価格上昇が当分続くだろうという見通しが出ている。アナリストのユン・ジェソン氏は「手袋用天然ゴムの使用量とタイヤの需要増加で10年ぶりに天然ゴムのスーパーサイクルが展開される見通し」と話した。天然ゴムの価格は2011年キログラム当たり6ドルとなったことがある。当時は東南アジアの天然ゴム生産地で発生した洪水で中国自動車市場の需要増加が重なり、天然ゴムの価格が急激に上昇した。