中国がタリバンを支援したという情報がしきりに流されているが、実際には支援とは程遠く腫れ物にでも触るような慎重な態度を取っている。中国にとってタリバンは一帯一路のパートナーとしてより安全保障上の問題の方がはるかに大きく、一筋縄ではいかない相手だからだ。
タリバーンの復権、中国にとってはチャンスよりもリスク
8/18(水) 8:00配信 CNN.co.jp
香港(CNN) アフガニスタン首都カブールの混乱ぶりを注視する中国。その目にはアフガン情勢がチャンスよりも差し迫ったリスクと映っている可能性が高い。
バイデン米大統領が4月に米軍のアフガン完全撤退を発表して以来、これに乗じて中国が米国の残した空白を埋め、自国のプレゼンスや影響力の拡大を図る可能性がしきりに取り沙汰されてきた。
先月には反政府勢力タリバーンの幹部と王毅(ワンイー)外相が会談し、こうした見方に一段と拍車がかかった。王氏は会談で、タリバーンが「アフガンの平和的和解と再建で重要な役割を果たす」と言明した。
しかし、アフガンの隣国としてこの地域に大規模投資を行う中国にとっては、将来の戦略的利益よりも、タリバーンの突然の復権に伴う安全保障上の課題の方がはるかに差し迫った問題だ。
米ワシントンのシンクタンク、ジャーマン・マーシャル財団のアンドリュー・スモール研究員は欧州外交関係委員会とのインタビューで、「中国はアフガンをチャンスという視点では捉えない傾向がある。脅威を管理することにほぼ主眼を置いている」と指摘した。
アフガニスタンは細長いワハーン回廊の端で中国西部・新疆と80キロにわたって国境を接しており、中国は長年、アフガンおける米軍のプレゼンスを警戒してきた。だが、実際にはここ20年、中国は米国がもたらす相対的な安定から恩恵も受けてきた。
中国は特に、アフガンがテロリストや、イスラム教徒主体の新疆の独立を目指す過激主義者の拠点になる事態を警戒。王氏もタリバーン幹部との先月の会談で、この点を優先課題として提起した。これに対し、タリバーン側は「いかなる勢力であれアフガンの領土を使って中国に害を及ぼすことは許さない」と応じた。
ただ、安全保障上のリスクは中国国境地帯に限らない。中国は近年、巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて中央アジアに重点投資してきた。タリバーンの政権奪取がイスラム教過激派に波及効果をもたらし、より幅広い地域で中国の経済的・戦略的な利益を脅かす可能性もある。
スモール氏は「中国政府はアフガン国内の権力状況に関して現実路線を取っているものの、タリバーンの掲げる思想的な目標には常に居心地の悪さを感じてきた」と指摘。「中国政府はアフガンにおけるタリバーンの成功が、パキスタン・タリバーン運動(TTP)を含め地域全体で軍事行動を触発する事態を懸念している」と語る。
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一帯一路の高速鉄道に地対空ミサイルが飛んでくる
こうした背景から、中国外務省の報道官もタリバンについて中国を”攻撃しない”という観点から評価していることが分かった。先日にゅーまぐ記事でタリバンは中国にとってのリスクだと書いたが、それを裏付ける発言と言える。
複雑な中国「タリバン、中国攻撃認めないと約束した」
8/17(火) 7:46配信 中央日報日本語版
20年ぶりにアフガニスタンに復帰したタリバンを見る中国当局の本心は複雑だ。米国が防いでいたイスラム原理主義勢力が中国の火薬庫である新疆に飛び火しないか懸念するためだ。中国は先月2日に米国のバグラム空軍基地撤退から予防外交に出たが急変する事態展開に当惑した姿だ。
中国外交部の華春瑩報道官は16日、「アフガニスタン情勢はすでに重大な変化が発生した」とし2週間ぶりの定例会見を始めた。華報道官は「中国はアフガニスタン国民の願いと選択を尊重する」としながらも「中国はアフガニスタンの国家主権と各政党の願いを十分に尊重する基礎の上にタリバンなどとの連絡と疎通を維持し、アフガン問題の政治的解決に向けた建設的役割を発揮したい」として原則的立場を明らかにした。タリバン政権を承認するかとの質問にも即答を避けた。「建設的役割発揮」という立場だけ繰り返した。
代わりに要求事項は明確に伝えた。華報道官は「きのう(15日)タリバンは戦争がすでに終結しており、交渉で開放的で包容的なイスラム政権を樹立し、責任を負う行動でアフガン国民と外国外交使節の安全を確保すると明らかにした点を中国は注意する。中国は(タリバンが)発表を実行できることを期待する」として圧迫した。
東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)と新疆ウイグル独立勢力の連係を念頭に置いた発言も忘れなかった。華報道官は「タリバン側は何回も中国との良好な関係を希望し、中国がアフガン再建と発展に参加することを期待し、決していかなる勢力もアフガン領土を利用して中国に危害を加えることを認めないと明らかにした。中国はこれを歓迎する」と強調した。7月28日にタリバンのアブドゥル・ガニ・バラダル師が中国の招きにより天津で王毅外相と会談し、ETIMとの関係を断つと約束したことを再確認した発言だ。
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ソ連も米国もこの地域に手を出して失敗した。そして中国が新たに足を突っ込もうとしているが、そのまま足抜けできずに紛争の渦に巻き込まれていく懸念が強まりつつある。一帯一路は地域の安定があってこその産物だ。高速鉄道に地対空ミサイルが飛んでくるような地域では誰も出資したくないだろう。中国は重大な岐路に差し掛かっている。