ルソン島中部アンヘレスの米軍クラーク空軍基地の正面ゲート付近から見た2度目の大爆発によるピナトゥボ火山の巨大な噴煙=1991年6月12日、フィリピン・アンヘレス(AFP時事)
南太平洋のトンガ諸島付近で起きた海底火山噴火による津波について、広島工業大の田中健路教授(気象学・海岸工学)は16日、「噴火の衝撃波による空気の振動が、噴火そのものによる津波を日本海溝付近で増幅し、波が高くなったのではないか」との見方を示した。
【写真】トンガの火山噴火を捉えた衛星写真
気象庁は当初、太平洋沿岸で若干の海面変動が起きる可能性があるとした予報を発表。実際には予想より早く、15日午後8時ごろから日本沿岸で潮位の上昇を観測し始め、その後大幅な上昇があったことから津波警報・注意報を発表した。
田中教授は、海底火山噴火でよく見られる、噴出物が起こす津波よりも先に、噴火で生じた空気振動に伴う海面の変動が起き、日本沿岸に連続的に到達したと分析。一方、水深の深い日本海溝付近を通過する際に津波が速度を増し、海面上の空気振動が伝わる速度とほぼ同じになった結果、共鳴を起こして津波の高さを増したと指摘した。
一方、噴火の規模について、防災科学技術研究所の中田節也・火山研究推進センター長(火山地質学)は「1991年のフィリピン・ピナトゥボ火山噴火に似ているが、規模は一回り小さい」と指摘。世界的な冷夏につながったピナトゥボと異なり、「気候に影響を及ぼす火山ガスの量ははるかに小さい」として、影響は限定的と分析した。
また、噴火に伴い軽石が発生している可能性に言及し、その量は昨年の小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」噴火時より多い恐れがあるとした。