「お母さんよりママがいい」里子の涙…何が正解?悩んだ里親


連載【里親になるということ(1)】

「お母さんよりママがいい」里子の涙…何が正解?悩んだ里親

ユウキさんの小学校の連絡帳。毎朝便を出すことが「どうしてそんな大切なの?」。日々のやりとりが細やかにつづられている(撮影・金田達依)(写真の一部を加工しています)

【写真】ユウキさんが「兄ちゃん」と一緒に選んだグラブ

 この子の里親になりませんか-。市の児童相談所(児相)から打診されたのは7年前、里親に登録して約2カ月後のこと。「ママのところには帰りたくない」。小学生のユウキさんはそう言って、約半年も児相の一時保護所にいた。里子として預かる期間は2年ほどという。

 色白で小柄。児相の面会室で初めて会った時、ちゃんと大きくなるか心配になった。短い時間で知れたのは好きな食べ物くらい。実の親とどんな暮らしをしていたのかも聞けなかった。

 当時60代半ばの夫と大学生の長男の3人家族に、ユウキさんが加わったのは3月、終業式の2週間前。「お母さん」。その日から、ユウキさんはそう呼んだ。ママではなく、お母さん。前の学校から引き継いだ連絡帳に、アイコさんは少し気負って書き込んだ。

 「本日よりどうぞよろしくお願い致します 母」

 登校初日、ユウキさんは新しい友だちを8人も連れてきた。一緒にゲームで遊び、菓子をほおばる姿に「大丈夫かも」と思えた。

 だがそれからは毎日が「低空飛行」。新しい家族の「常識」にユウキさんは混乱した。2品、3品と出るおかずに「なんでこんなにいっぱい?」。規則正しい生活のせいか毎朝便が出るようになると「毎日うんちするなんて僕は病気?」。

 ランドセルを開けると、かびたパンが大量に出てきた。「給食で残したら言えばいいんだよ」。そう伝えてもどうしても言えない。クリスマスプレゼントをクリスマスの前にほしいと1時間泣いた末にパジャマ姿で家を飛びだした夜は、夫婦で何時間も探し回った。かと思えば、お風呂に入る時は「おんぶして」とアイコさんに甘える。



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