横浜地裁
神奈川県大井町の東名高速道路で2017年、「あおり運転」をした末に一家4人を死傷させたとして、自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)などに問われた福岡県中間市、無職石橋和歩被告(30)に対する差し戻しの裁判員裁判が3日、横浜地裁(青沼潔裁判長)であった。事故で両親を失い、自身も軽傷を負った一家の長女(20)が別室からモニター越しに審理に参加し、被害状況を証言した。
当時15歳だった長女は、母・萩山友香さん(当時39歳)(静岡市清水区)が運転するワゴン車の助手席に乗っていた。
長女の証言によると、パーキングエリアで父・嘉久さん(当時45歳)が石橋被告の駐車の仕方を注意してから「あおり運転」が始まり、第2車線を走行中に被告の車が前方に割り込んできた。被告の車が減速して車間距離が詰まったため、一家の車はその後3回、車線を変更。しかし、そのたびに前方を塞がれ、最後には被告の車が減速、停車するのに従って、第3車線上で車を止めたという。
車を降りて近づいてきた被告に嘉久さんがどなられるなどし、その直後、一家の車に後続の大型トラックが追突して、嘉久さんと友香さんが犠牲になった。
長女は検察官からの質問に気丈に答えていたが、両親が亡くなったと知った時の気持ちを問われると、「会えないんだなと思った」と声を震わせた。被告への処罰感情については「反省の気持ちが感じられず、悔しい。悪いことをしたのを私は見ていた」と訴えた。
被告はトラックによる追突事故を誘発したとして起訴されたが、差し戻し審では、事故を引き起こすような危険な運転はしていないと主張。弁護側も死傷事故について無罪を主張している。