「トイレ詰まった」検索しないで!若者ほど陥る高額請求の“わな“


「トイレ詰まった」検索しないで!若者ほど陥る高額請求の“わな“

トイレ修理をめぐる相談件数

【写真】東京都下水道局による注意喚起

◇「水回り修理500円から」

 千葉県内で1人暮らしをしていたある20代の女性は、休日の夜に賃貸アパートのトイレが詰まったことがきっかけで、高額請求トラブルに遭った。管理会社と連絡が取れず、困った女性はスマートフォンで修理業者を検索。上位に表示された「水回り修理500円~」と書かれたサイトを通じて修理を依頼した。アパートを訪れた業者は「圧力ポンプを使って詰まりを解消する」と言い、8000円の代金を提示してきたという。

 ところが、詰まりは解消しなかった。「便器を外しましょう」「衛生費が掛かります」「配管の洗浄が必要です」。業者は作業が進むたびに、さまざまな名目で1万円、2万円と代金を上乗せ。最後は「バキュームカーを呼ばなくてはならない。本当は100万円かかるが、自分はたまたま修理できる道具を持っているので、いま作業してしまった方がいい」と迫り、作業が終了すると総額20万円を請求してきた。「高額すぎる」と苦情を言っても、業者は「1万円なら値引きする」と答えるだけ。結局、女性は預金を下ろして19万円を支払った。

◇狙われる新生活

 東京都消費生活総合センターによると、こうしたトイレ修理に関する都内の相談件数は例年、200~300件前後で推移してきたが、2020年夏ごろを境に急増。20年度は前年度の3倍近い954件となり、相談内容の8割近くを高額な修理費請求が占めた。 国民生活センターによると、全国的にも同様の傾向がうかがえ、相談者の多くは前述の女性のケースとよく似た状況で料金トラブルに巻き込まれていたという。

 一体何が起きているのか。都消費生活総合センター消費生活専門課の高村淳子課長によると、トイレ修理をめぐる消費者相談は従来、「ポストに投函されていた業者のマグネット型広告を見て依頼したら、高額な料金を請求された」といった高齢者からのものが中心だった。

 しかし、20年夏ごろ、「検索サイトで上位に表示された格安業者を呼んだところ、料金をめぐるトラブルに巻き込まれた」「作業開始後、別の作業が必要だと言われ、高額な料金を上乗せされた」と訴える若者の声が急増。20年度にセンターに寄せられた相談は20代からが前年度比6.6倍になり、年代別でトップに立った。

 高村課長は、新型コロナウイルスの感染拡大により在宅時間が増え、自宅のトイレを使用する機会が多くなった結果、詰まりや故障自体が増えていると分析。その上で、「特に大学進学や就職で1人暮らしを始めたばかりの若者は、水回りのトラブルに自分で対処した経験が少ない。悪質業者がウェブ上で積極的に広告を出し始めた時期と重なり、若者の高額請求被害が急増したのではないか」と推測する。

◇検索上位、「リスティング広告」のわな

 水回りの高額請求トラブルは、京都府や愛知県などで集団訴訟に発展している。修理業者7人に計約660万円の支払いを求める集団訴訟を起こした「レスキュー商法被害対策京都弁護団」事務局長の増田朋記弁護士は「検索画面の上位には広告が表示されることがあると知らず、『よく検索されている業者だ』と認識して高額請求の被害に遭ってしまう人が多い」と話す。

 実際に記者が大手検索サイトで「トイレの詰まり 解消法」と検索してみると、上位4件には「全国すぐ向かいます」「お電話一本ですぐにおうかがいします」などと書かれた修理業者のサイトが並んだ。サイト名の横には「広告」の文字があり、自分でできる詰まりの解消法についてのサイトはその下に表示されている。

 こうした広告は「リスティング広告」や「検索広告」と呼ばれ、どのサイトが表示されるかは検索サイトごとに決められたオークション形式によって決まる。各業者が決めた入札単価などを基に「広告ランク」が定められ、関連する言葉が検索されるたびに掲載順位が決定される仕組みだ。リスティング広告が高額請求に悪用されていることを憂慮した弁護団は21年5月、米グーグル日本法人に対し、悪質業者の広告掲載の中止と厳格な審査を求める申し入れ書を送付した。

 弁護団は、別々の悪質業者が全く同じ書式の契約書やサイトの写真を使い回しているケースがあったことから、こうした業者同士が裏でつながっている可能性があるとみている。増田弁護士は「突然のトラブルで焦っていると、つい目に止まった業者を頼ってしまう。焦りにつけ込む悪質商法は、害虫駆除や鍵開け作業でも問題になっている」と指摘。「リスティング広告は業者が有償で掲載するもので、それだけ利益が見込めるということ。格安料金の宣伝に釣られないよう気を付けてほしい」と語った。



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