「女性だけ制服」の銀行文化廃止の流れ、それでも残る壁とは

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「女性だけ制服」の銀行文化廃止の流れ、それでも残る壁とは

制服着用義務が廃止され、スーツやブラウス姿で働く佐賀共栄銀行の女性行員たち=福岡市博多区で2022年3月17日午後4時57分、久野洋撮影

 「制服に比べて格段に動きやすくなりました」。3月中旬、福岡市博多区にある佐賀共栄銀行(佐賀市)の福岡支店を訪ねると、黒いスーツや淡い色のブラウス姿の女性行員たちが笑顔を見せた。

 同行ではもともと支店や本店の女性行員にスカートタイプなどの制服着用を義務づけていたが、2021年4月にジェンダー平等の観点などから義務づけを廃止。パート従業員が希望した場合に限って既に支給した制服の着用を認めている。

 同様の動きは全国的に見られ、近年では、みちのく銀行(青森市)や島根銀行(松江市)が廃止。佐賀銀行(佐賀市)も23年4月に廃止予定だ。新生銀行(東京都)は発足から間もない01年ごろに廃止。りそな銀行(大阪市)は03年の発足当時から制服がない。

 しかし、こうした銀行はあくまで業界のごく一部。「本人の選択でスーツも可」(福岡銀行)、「支店の判断で制服以外も可」(大手行)といった選択制の銀行もあるが、多くの銀行では管理職以外の女性を中心に制服の着用義務が残る。

 そもそもなぜ銀行業界では女性行員だけに制服を着用させているのか。金融関係者らによると、銀行を含む国内企業の多くは高度経済成長期以降、事務や接客で補助的業務を担う女性を「一般職」として採用。ビジネスウエアの種類が少ない女性の衣類を管理し、男性よりも賃金が低い女性の負担を抑えるために制服を貸与するのが一般的だったという。

 しかし、00年以降は一般職を廃止する企業が増加。銀行業界では経営悪化や統廃合が相次いだため、個性尊重や経費削減のため、大手行や地銀の多くで制服廃止がブームとなった。繊維業界関係者も「制服は高価で企業にとってはコスト削減効果が大きい」と説明する。ところが、この動きは一過性に終わり、ほとんどの銀行は数年後に制服を復活させている。

 ◇「けしからん」と顧客クレーム相次ぎ

 なぜ制服廃止が根付かなかったのか。ある地銀幹部は「銀行は顧客からの目が厳しく、女性のブラウスやスーツに『服が透けているのがけしからん』『胸元が開いている』などと顧客からクレームが相次いだ」と打ち明ける。「年配の顧客が多い地域ほど女性行員の服装がクレームにつながる」(大手行員)、「顧客の資産を扱う仕事なので制服姿のほうが信頼してもらえる」(地銀行員)という声も根強く、制服復活につながったという。

 その後、再び訪れた制服廃止の流れだが、最近になって制服を廃止する銀行の狙いはジェンダー平等だけではない。佐賀銀行の担当者は「自主性を高めてイノベーションが起こりやすい環境づくりにつながる」と組織風土改革も理由に挙げる。日銀のマイナス金利政策によって融資で収益を上げにくくなり、銀行はコンサルティング業務などで経営の多角化が求められることも背景にありそうだ。

 懸念されるクレームについて、佐賀共栄銀行は「営業担当者はスーツ着用とし、名札の着用も徹底しており、今のところ大きなクレームはない」と話す。制服を廃止した別の地銀の女性行員からは「今は価格も手ごろで良質なビジネスウエアも多い」「女性だけ制服を着るのはやっぱりおかしい」と廃止を歓迎する声が聞かれた。

 一般財団法人「サニクリーンアカデミー」が21年4月に実施した意識調査では、制服自体については65・6%が公私の区別や社員の識別に役立つとして肯定的に評価。しかし、回答者の41・8%は男女の片方だけに制服の着用義務がある企業に違和感を感じ、34・9%が役職によって制服と私服を使い分ける企業に違和感を感じていることが分かった。

 神奈川大の笠間千浪教授(ジェンダー研究)は「歴史的に見ると、女性だけに制服を着せるのは、女性が男性の補助的な立場だと社員や顧客に示す意味合いがあった。機能性より女性らしさを強調したデザインが多いのも問題だ」と指摘。「職場のダイバーシティー(多様性)実現に女性の制服廃止は意味がある。制服が必要だと企業が判断した場合、着用義務は性別で分けるべきでない」と話す。【久野洋】

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