南海トラフ巨大地震の想定震源域に隣接する日向灘や南西諸島などで、マグニチュード(M)8級の巨大地震が起き得るとする新たな長期評価を、政府の地震調査委員会が25日、公表した。平成16年に初公表した同地域の長期評価はM8級を想定しなかったが、23年の東日本大震災を受け最新の知見で見直した。また日本海南西部の海底活断層の長期評価も初めて行い、30年以内にM7以上の地震が起きる確率を、活断層としては高い8~13%とした。
長期評価は、地球を覆うプレート(岩板)の境界や活断層で起きる地震の規模や発生確率を予測する。新たに想定された巨大地震は三つで、このうち二つは日向灘と、南西諸島周辺から与那国島周辺にかけてで起きるM8程度。過去にも起きた可能性が高いことなどから想定されたが、データ不足で確率は不明とした。
もう一つは、1771年に与那国島を含む八重山列島を大津波が襲った八重山地震津波のようなM8・5程度のタイプ。こちらも発生の可能性は認めたが、不明点が多いことから確率評価の対象外となった。
地震調査委の平田直委員長(東京大名誉教授)は「M8級は過去に発生した可能性が高く、将来も起き得るという考え方で想定した」と語り、警戒を呼び掛けた。
このほか、M7~7・5程度の大地震の発生確率は与那国島周辺で30年以内に90%程度以上、日向灘で80%程度、南西諸島周辺でも確率は不明だが発生し得るとした。また、陸側プレートの下に沈み込む海側プレートの内部で起きるやや深い地震は、M6・7~7・4程度が安芸灘から伊予灘、豊後水道にかけてで40%程度、M7~7・5程度が九州中央部(確率不明)と南西諸島北西沖(60%程度)でそれぞれ起き得ると評価した。
一方、鳥取県-長崎県沖の日本海南西部の海底活断層については三つの領域に分け、30年以内のM7以上の地震の発生確率は、東部3~7%、中部3~6%、西部1~3%。全体は8~13%とした。領域最大の活断層で、東部にある全長94キロ程度の伯耆(ほうき)沖断層帯ではM7・7~8・1程度が起きると評価。「活動間隔が数千年以上となる活断層の地震としては、いずれも高い発生確率と受け止めてほしい」(平田氏)という。
海域が震源の大きな地震は津波を伴うことが多い。今後は今回の長期評価で想定された地震の規模などにに基づき、津波の高さなどについても予測していく。