マクロン大統領(左側)とマリーヌ・ルペン氏(右側)
4月10日の仏大統領選の第一回投票の結果、マクロン大統領と国民連合のマリーヌ・ルペン氏の2人が24日の決選投票に臨むことになった。5年前の大統領選と同じ顔合わせで争われるわけだが、ウクライナへのロシアの軍事侵攻が続く中で非常に重要な意味を持つ選挙となる。いまのフランスの顔が誰になるかは、ヨーロッパの代表が誰になるかにつながるからだ。
私は2017年の大統領選を取材し、当時39歳という若きリーダーの誕生を目の当たりにした。その後も、特派員として1期目のマクロン氏の施政を取材し生活者としてパリで暮らす中で、感じた3つの特徴がある。それは「安近短」ならぬ、「若近長」。「若くて、近くて、長い」リーダーだということだ。
若き大統領はまだ44歳…「寛容さ」や「落ち着き」が必要?
マクロン大統領
まず「若さ」だ。フランス史上最も若い大統領となったマクロン氏は、現在44歳。仮に2期目に入り任期を終えたとしても50歳に至らない。69歳のブリジット夫人とは四半世紀離れた年の差カップルとして有名だ。多数の大統領を輩出するENA(国立行政学院)出身で投資銀行に勤務していた超エリート。右でも左でもない政治グループ「共和国前進」を率い、就任後から経済、年金など改革プランを矢次早に繰り出した。実際、失業率を改善させるなど一定の成果を出してきた。また、外交面でも国際会議などでフレッシュなイメージをふりまき、レバノンやロシアなどへの仲介外交でエネルギッシュに立ち回ってきた。
黄色いベスト運動の様子
ただ、一方で若さゆえの拙速さも目に付いた。ガソリン税の引き上げをきっかけに黄色いベスト運動が勃発し社会が一時混とんとした状態になり、年金改革への反発では交通機関などの史上最長50日以上のストライキを招いたこともあった。権利意識の強いフランスの労働者層の不興を買っていることが今回の選挙戦での苦境にもつながっている。
また、「NATOは脳死状態にある」とか「ワクチン未接種者をうんざりさせる」など若気のいたりとはいえ行き過ぎた発言で不要な混乱を起こすこともあった。去年まではヨーロッパの顔だったドイツのメルケル前首相が暖かく包み込んでくれていた部分があったが、その庇護ももはやない。2期目となれば「若さ」に加えて「寛容さ」と「落ち着き」を増したリーダーとなりヨーロッパをまとめていくことが求められる。