共産党の志位和夫委員長(矢島康弘撮影)
「自衛隊と憲法9条は両立しない」と主張しつつ、緊急時には「憲法違反」の自衛隊を活用するという共産党の志位和夫委員長の発信をめぐり、立憲民主党と日本維新の会の評価が一致していない。維新は「ご都合主義」と批判的だが、立民は「現実路線化だ」と好意的に受け止めている。夏の参院選における共闘関係の有無も影響していそうだ。
「片腹痛いとはこのことだ。日夜、国防という崇高な任務に就く自衛隊を綱領で『違憲だ』と虐げつつ、都合のいいときだけ自衛隊に頼るとはあきれる」。14日に開かれた衆院憲法審査会で、維新の馬場伸幸共同代表は共産の自衛隊観を批判した。過去に共産の藤野保史元政策委員長が防衛費を「人を殺すための予算」と発言していたことなども問題視した。
これに、共産の赤嶺政賢氏は「共産の路線を歪曲(わいきょく)した発言に抗議したい。私たちは憲法制定時から軍隊は持たないからといって、個別的自衛権を持っていないわけではないとはっきり主張してきた」と反論。「デマを言うにもほどがある」とも強調した。
ちなみに、共産は一貫して9条を支持してきたわけではなく、現行憲法の制定時は「一個の空文にすぎない。自衛権を放棄して民族の独立を危うくする危険がある。民族独立のために反対しなければならない」との見解を示していた。
維新の矛先は参院選で共産との候補者調整を模索する立民にも向けられ、足立康史氏は憲法審で「共産のような政党と選挙協力をしている勢力とは一切、政治を共にするつもりはない」と訴えた。
その野党第一党は志位氏の発信を歓迎している。立民の小川淳也政調会長は14日の記者会見で「心強く受け止めている。(共産の自衛隊観の)根本が変わっていないという厳しい評価よりも、現実に即応した発信に努めている評価の方が私の中では勝る」と述べた。
また、ある立民幹部は「共産はすでに中道化しつつある。理解し合えない人たちだと思っていたが、そんなことは全然なくなった。連携できなくはない」と語った。(内藤慎二)