(写真:読売新聞)
存在しないはずの3本目の鍵があった――。勾留中の女性にわいせつな行為をしたとして岐阜県各務原市、元大垣署留置管理課巡査長杉山泰弘被告(32)が特別公務員暴行陵虐罪に問われた事件。岐阜地裁で15日に行われた初公判で検察側が明らかにしたのは、同署のずさんな留置管理の実態だった。他署の幹部からは「なぜそんなずさんな鍵の管理がされていたのか」との声が上がっている。
【写真】「保安上の規定で答えられない」とコメントした岐阜県警
公判で検察側は、同署は内部規定で、署内の留置施設の鍵の数を2本と定め、1本は日中に留置管理課長が、当直態勢時にはその日の当直長が管理し、もう1本は、予備として使わずに保管するよう定めているとした。
冒頭陳述などでは、署内には当時、鍵が何らかの理由で3本存在し、そのうち無施錠の引き出しに入れられて管理されていた1本は、課員が自由に使える状態だったと指摘。杉山被告はこの鍵を使って、他の警察官の目を盗んで留置施設の居室内に入り、好意を持った勾留中の女性に複数回、わいせつな行為に及んだと主張した。
また、証拠調べでは、同署の別の警察官が「鍵が3本あり、勤務当初は違和感を持ったが、大垣署は大きい署だからだと思った」と述べた供述調書も読み上げられた。
県警は2月、杉山被告を懲戒免職とした際、居室の鍵の管理を怠ったとして、当時の同課課長だった50歳代警部を減給100分の10(6か月)の懲戒処分に、署長ら同署の警察官13人を本部長訓戒などとした。県警は当時、「留置管理課長の判断で、留置者の管理業務をスムーズに行うため、看守が鍵を自由に使える状態にしていた。不適切な管理体制だった」と説明したが、鍵が規定の本数より多かったことは明らかにしていなかった。
鍵が3本存在したとされたことについて、県警監察課は、「保安上の規定で答えられない」としている。ある警察署幹部は「どういった経緯で鍵の数が増えたかは定かではないが、大垣署の管理はあまりにずさんだ」と話した。