息子の入院中、母親はそれまでの経緯を振り返りつづった
スリムな体形への憧れをきっかけに、食事の量を減らして極端に痩せたり、過剰に食べて吐いたりする「摂食障害」。10~20代の若者がかかりやすいことで知られるが、多数の症例がある九州大病院(福岡市東区)によると、新型コロナウイルスの流行でいっそう低年齢化が進んでいるという。命に関わる恐れもあるとして、親や教師など周囲の大人が早く気付き、受診を促すよう呼び掛けている。 (下崎千加)
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九大病院は、国と各県が全国4カ所に設置した「摂食障害支援拠点病院」の一つ。他は東北大病院(仙台市)、国立国際医療研究センター国府台病院(千葉県市川市)、浜松医科大付属病院(浜松市)。本人や家族から相談を受けて医療機関を紹介したり、医療者向け研修会や市民向け講座を開いたりしている。これ以外にも「摂食障害全国支援センター」が国立精神・神経医療研究センター(東京)に設置されている。
コロナの流行が始まった2020年度に福岡県摂食障害支援拠点病院(九大病院内)が受け付けた新規相談者数は202人(前年度比29人増)。うち10代以下は76人と37・6%を占め、15年12月の設置以来、最大の割合になった。21年度は33・5%に下がったが、依然として高い水準を示す。新規相談者数も過去最多の221人と増加傾向にある。
また、同病院の心療内科にかかった摂食障害の初診患者に占める10代以下の割合も、19年度までは3~4割ほどだったのが、20年度は52・0%、21年度は48・6%になった。実際は痩せているのに「コロナ自粛で太った気がする」などと訴える子どもが目立った。
摂食障害を訴える新規相談者に占める10代以下の割合
同病院心療内科の高倉修医師は、もともとダイエットに興味がある中で、一斉休校や部活自粛で友人との触れ合いが減り、意識が自分自身の内側に向かった結果、体形や体重が過剰に気になりだしたのではないかと分析する。ただ、自宅待機で子どもと接する時間が増えたためか、親が早めに気付いて受診させる傾向も見られたという。
摂食障害の患者は全国に推定22万人いるとされる。拒食症と呼ばれる「神経性痩せ症」から発症し、食べては吐く「神経性過食症」に移行するケースがあり、治療が遅れるほど完治が難しくなるという。高倉医師は「低栄養による突然死の恐れや(死にたいと願う)希死念慮が高まる危険性がある。精神疾患の中でも死亡率が高いのに、本人は病気の自覚を持ちにくい」として、家族など周囲の気付きと協力が欠かせないと訴える。
摂食障害の治療ができる医療機関は、精神科や心療内科など福岡県に31施設、九州の他の6県にもそれぞれ2~13施設ある。福岡県摂食障害支援拠点病院=092(642)4869(月、水、金曜のみ、午前9時~午後4時)。