鹿児島地裁・家裁=西貴晴撮影
鹿児島大病院(鹿児島市)の医師らが適切な診断と治療をしなかったため、寝たきりになる後遺障害を負ったとして、研修医だった鹿児島市内の男性(40)が病院を運営する鹿大などに慰謝料など約4億1200万円を求めた訴訟の判決が20日、鹿児島地裁であった。坂庭正将裁判長は診断ミスと後遺障害との因果関係を認め、鹿大などに約3億2700万円の支払いを命じた。
判決などによると、鹿児島生協病院(同市)の研修医だった男性は2007年12月、勤務中に頭痛などを訴え、同病院で頭部CT(コンピューター断層撮影装置)検査などを受けた。異常を確認した生協病院は手術の必要があるとして、鹿大病院の脳外科医に診察を依頼。脳外科医は生協病院のCT画像などから悪性の脳腫瘍「膠芽腫(こうがしゅ)」の可能性があると判断した。
鹿大病院では直ちに治療が必要とは判断せず、生協病院に継続入院させたが、男性は嘔吐(おうと)を繰り返し、鹿大病院での診察から4日後に意識を失って救急搬送された。鹿大病院で改めてCT検査したところ、実際は脳内にうみがたまる「脳膿瘍(のうよう)」による脳ヘルニアで、開頭手術したが、寝たきりの状態となった。
判決は、脳外科医はさらに検査を実施するなどして、脳膿瘍の疑いが高いと診断すべきだったと指摘。脳外科医やその判断に従った生協病院の医師の過失を認定した。坂庭裁判長は「疑いをもって直ちに治療を開始していれば、後遺障害を避けることができた」と結論付けた。
男性の介護を続けている母親(74)は判決後、「病院には一つの病気に固執せず、いろいろな病気を疑って診察してほしい」と話した。鹿大病院は「判決文の内容を詳細に検討して、今後の対応について協議する」、生協病院を運営する鹿児島医療生活協同組合も「内容を確認次第、今後の対応を検討する」とコメントした。【宗岡敬介】