スリランカ人ウィシュマさん入管死亡事件 診察した医師の判断に遺族ら憤り


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 訴状によると、20年8月20日から収容されたウィシュマさんは遅くとも翌21年1月18日ごろには摂食困難となり、2月15日の尿検査で「ウロビリノーゲン3+」「ケトン体3+」「蛋白質3+」を示した。これは「飢餓状態」で電解質異常や腎機能障害を起こしている可能性を意味するのに、本人や支援者が再三求めた点滴や入院、一時的に収容を解く「仮放免」も許されないまま死亡した。

 これに対して、今回の陳述書で医師は、「ケトン体3+」という結果が「低栄養の状態を示唆する要素となると認識している」とし、さらに「重篤な脱水や低栄養の状態になると、意識障害が生じたり、血圧が低下したり、皮膚が乾燥したりすることがある」と説明。

 一方で、3日後の2月18日の診察でウィシュマさんに意識障害がなかったことや、看護師などから嘔吐はするものの食事や経口補水液は摂取していると聞いていたことなどから、「重篤な状態(重症)に至っているとは考えなかった」と、当時の判断を振り返った。

 国が21年8月に公表した「調査報告書」でこの医師は「2月18日の診療時に尿検査結果を把握したかどうかの記憶は定かではないと(中略)述べている」とされていたが、陳述書では「私が2回目(2月15日・筆者注)の尿検査の結果を認識していないという可能性は考え難いと思う」と訂正した。

 さらに、「私だけではなく、医学教育を受けている看護師等の医療従事者もウィシュマ氏の様子を日々見ていたのであり、仮に、急を要する状態であれば、看護師等から私に報告をしてくることもあると思われるが、そのような事情もなかった」と釈明してみせた。

 収容された部屋を真上から撮影した監視カメラ映像にも「点滴をお願い」と職員に懇願するウィシュマさんの声が記録されているのにもかかわらず、陳述書では診察時に「点滴をしてほしいなどの要望はなかった」と繰り返し記述。

「私の判断は、診療時のウィシュマ氏の状態や各検査結果、他の医師の判断を踏まえたもので、各時点で私が把握していた情報を前提とすれば、不合理なものではなかったと考えている」と主張した。



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