国内最高齢を大幅に超え、存命の可能性が低い所在不明者の家族らから、法的に死亡したとみなす「失踪宣告」の申し立てが行われるケースが相次いでいる。読売新聞の調べでは、昨年4月からの1年間に120歳以上だけで50人に上った。相続手続きに必要なためだが、専門家からは「申し立てに伴う負担の軽減が必要」との指摘が出ている。(林佳代子)
1年半
官報に掲載された失踪宣告の申し立て。不明者は149歳になる
<1892年(明治25年)生まれ、名古屋市の男性>
昨年5月、名古屋家裁への失踪宣告の申し立て内容が官報に掲載された。男性は現在の国内最高齢(115歳)を大きく超える128歳で、申し立てたのは大阪府の女性(79)だった。
女性は2020年5月に亡くなった母方の叔母の相続人になった。預金通帳について他に法定相続人がいないか調べる必要が生じた。叔母の戸籍などを取り寄せると、叔母の母親と離婚後、所在不明になっていた男性の存在が浮上した。
女性は弁護士に依頼して男性の足取りを追ったがわからなかった。失踪宣告が認められ預金も相続したが、叔母の死から1年半がたっていた。弁護士費用などが追加でかかり「名前も知らない親族を捜すことになるなんて」とこぼした。
149歳も
失踪宣告は、所在不明が原則7年以上続く人に対し、家族らが家庭裁判所に申し立てる。最高裁の統計では、申立件数(宣告取り消しの申し立ても含む)は近年2000件台で推移し、20年は2115件だった。
申し立ては官報に掲載されており、読売新聞が調べたところ、21年4月からの1年間で明治生まれは111人いた。うち掲載時に120歳以上だったのは50人を数えた。最高齢は149歳の男性で、やはり相続時の調査で所在不明であることがわかったケースだった。
「不利益大きい」
(写真:読売新聞)
100歳以上の所在不明者について、市区町村は戸籍整理を目的に職権で削除することがある。だが、民法は相続人の生死の厳格な確定を求めており、相続には失踪宣告が必要となる。
申し立てには、警察に捜索願を出したり、申立人と不明者との関係を示す資料を提出したりすることが必要だ。家裁では調査官らが出入国の記録を関係機関に問い合わせるなどして所在を調べる。失踪宣告まで半年はかかるとされる。