高校生が16年間伸ばした髪 亡き祖父にささげるヘアドネーション


高校生が16年間伸ばした髪 亡き祖父にささげるヘアドネーション

ヘアドネーションのためにカットした髪の毛を手に笑顔を見せる野々口寿璃さん=京都市伏見区で2022年4月20日午後9時25分、花澤茂人撮影

【写真】ウイッグ外しても、私は私

 ◇助けたかったけれど…

 きっかけは祖父・昭さんとの別れだった。両親が共働きだった野々口さんは、幼い頃から同居する昭さんが遊び相手の、典型的な「おじいちゃん子」だった。伸ばし続けた長髪も、祖父を喜ばせるため。野々口さんは小学生の間、北野天満宮(同市上京区)の祭礼で装束を着けて舞う「八乙女」として活動し、その独特の髪形には、長髪の方が整えやすかった。昭さんは、孫娘の舞い姿を見るのを誰よりも楽しみにしていた。

 しかし昭さんは2015年ごろから悪性リンパ腫が悪化し、抗がん剤の影響で頭髪が抜けた。入院先で再会した野々口さんは、その姿にショックを受けた。母の香織さん(55)から状況を説明され、「ヘアドネーション」という支援を知った。「私が助ける」と髪を切ろうと思ったが、最後の八乙女の舞いが控えていたこともあり、果たせなかった。その舞いを見ることなく、昭さんは17年3月に73歳で亡くなった。

 ◇同じつらさ「力になりたい」

 「おじいちゃんを助けられなかった」という思いは胸に重く残った。しかし中学2年の時、足の治療で1週間ほど入院した病院で、頭部を隠すように帽子をかぶる小学生くらいの女の子を見かけた。「おじいちゃんと同じだ」。その子の沈んだ表情を見かけるたびに心が痛み「同じように苦しんでいる人の力になりたい」と思うようになった。

 子どもたちに医療用ウイッグを提供する大阪市のNPO法人「ジャパン・ヘア・ドネーション・アンド・チャリティー(JHD&C)」のホームページを調べ、必要な髪の長さなどを確認。手入れにも気を使い、毎日1時間かけて髪を洗った。

 しかし、慣れ親しんだロングヘアを切るのには、勇気が必要だった。年2回、毛先を整えるため美容院へ行くたびに言い出そうと迷ったが「友達から『似合わない』と言われるのでは」などと思い、踏み切れなかった。しかしこの春「逃げていても仕方がない」と決断した。

 切った髪の長さは約45センチ。友人には驚かれたが、説明すると「すごい」と共感してくれたことがうれしかった。洗髪時間を半分ほどに短縮できたのも「受験を控える身としてはうれしい」と笑う。

 髪はJHD&Cを通じて子どもたちに贈る。「顔も知らない相手だとしても、私の力で誰かを助けることができる。きっとおじいちゃんも喜んでくれる」。思いを込めた髪の束を手に、前を向いた。【花澤茂人】



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