ザポリージャ原発の近くで警備にあたるロシア側の兵士(ロイター)
【キーウ=笹子美奈子】ロシア軍が占拠するウクライナ南部ザポリージャ原子力発電所に対し、国際原子力機関(IAEA)が現地調査団の派遣を求めている問題で、露外務省高官は16日、自国が指定したルートでの現地入りを求めた。
【動画】ウクライナ軍、米国が供与した榴弾砲でロシア軍陣地を攻撃
タス通信などによると、この高官は、国連側がキーウ経由で派遣する意向を示したことを受け、「前線地帯や、我々が管理する地を抜けるのに、ウクライナ側が護衛する案はばかげている」と述べた。ロシア政府は、露軍が実効支配する地域を経由することを要求しているとみられる。現地調査が実現するかどうかは不透明だ。
ザポリージャ州の親露派は16日、原発近くの住宅地で砲撃があったと主張した。また、ウクライナの国営原子力企業エネルゴアトムは16日、露国内から同社ホームページに対し、「侵略開始以降、最大」のハッカー攻撃があったと発表した。
一方、ロシアが併合したウクライナ南部クリミアで16日に起きた露軍の弾薬保管場の爆発について、米政策研究機関「戦争研究所」は16日、露軍がウクライナ本土南部の部隊に兵力や装備を補給する中心拠点の町だったと指摘。ウクライナ軍がヘルソン州で続けるドニプロ川西岸の奪還作戦の一環の可能性もあると分析した。
ウクライナの大統領府顧問は16日、爆発について「始まったばかりだ」と述べ、今後も露軍関連施設などで続くとの認識を示した。大統領府顧問は16日配信の英紙ガーディアンとのインタビューで、ロシアがクリミアと露本土を結ぶため建設した大橋について「違法で、軍部隊をクリミアに運ぶ主要路でもある。破壊されるべきだ」とし、標的になる可能性を示唆した。
黒海経由でのウクライナ産穀物輸送を巡っては、国連の世界食糧計画(WFP)が調達した小麦2万3000トンを載せた貨物船が16日、南部ユジニ港を出港した。今月1日の再開以降、人道支援目的の輸送は初めてで、エチオピアに向かう予定だ。