漂流する日中関係 韓国が握るカギ

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漂流する日中関係 韓国が握るカギ

中国の王毅外相(右)と会談する韓国の朴振外相=中国の青島で2022年8月9日、韓国外務省提供、AP

 そんななかで、韓国の朴振(パク・ジン)外相は8月9日、中国の青島を訪れて中国の王毅外相と会談した。韓国の保守層からは、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が訪韓したペロシ氏と直接会談しなかったのは外相の訪中が控えていたためで不適切だったという批判が出ている。

 会談後、韓国に配備された米軍の終末高高度防衛(THAAD)ミサイルをめぐって中韓間で不協和音が生じてもいる。

 それでも、台湾周辺での軍事演習などで地域の緊張を高める中国と対話する意義はあった。では、日本はどのような対応をとるべきか。

 ◇習近平氏訪日見送りから続く漂流

 日中関係は、2020年春に習近平国家主席の国賓訪日が見送られて以降、漂流してきた。

 「今は、『戦略的互恵関係』も『競争から協調へ』も使っていない」。日本政府関係者は、現在の日中関係を定義する言葉は見当たらないと話す。「戦略的互恵関係」は06年に、「競争から協調へ」は18年に、いずれも安倍晋三首相(当時)が訪中した際、相互利益をもたらす関係構築を目指して表明したものだ。現状はこのいずれにも当てはまらない、と言う。

 5月には、中国が日中中間線付近のガス田開発を続けていることが明らかになった。日本側は6月に開かれた局長級の日中海洋協議で、ロシアによるウクライナ侵攻を引きながら、「国際社会は中国と名指しせずに、一方的な現状変更の試みに懸念を表している。なぜわざわざ自らこうした行為をするのか」と伝えた。中国側は苦笑いしていたという。

 参院選後には、宏池会の伝統を強調する岸田文雄首相が対中外交で手腕を発揮するとの期待があったが、安倍氏の襲撃事件によって東アジア外交は身動きがとりにくくなった。対中外交はナショナリズムに火が付きやすい。保守層を説得できる安倍氏がいなくなったことが影響している。

 参院選から数日後、外務省幹部は「林芳正外相の訪中はただでさえ難しかったのに、これでダメになった」と言い、50周年の記念行事も白紙だと嘆いた。

 ◇生きているチャンネルはどこか

 中国は日本の出方を見ていたが、台湾周辺での軍事演習計画などを主要7カ国(G7)が批判したため、会談をキャンセルせざるを得なくなったのが正直なところだろう。

 朴氏の訪問を受け入れた王氏は会談冒頭で、「互いの内政に干渉してはならない」と述べた。日米などと足並みをそろえないよう韓国をけん制した発言だ。また、朴氏は軍事演習を非難しなかったようだ。日本の立場から見ると物足りなさを感じる。

 一方で朴氏は会談で、日中韓3カ国の意思疎通や協力の必要性について述べた。日中間の対話も促したといえ、中国と対話が可能な国としての役割を果たそうという意図が読み取れる。

 ◇日韓で連携して対中外交を

 今年は日中50周年であるとともに、中韓は8月24日に国交正常化30周年を迎える。この好機を生かす道はないか。まずは韓国と連携することで対中外交を立て直すヒントが得られるのではないか。

 日韓間には徴用工問題をはじめとする難題があり、協力に反対する声がある。ならば、水面下で情報共有することから始めるのはどうか。

 対日外交に長く携わる韓国政府関係者は、「韓日関係が良かったころは、G7などの国際会議の前、日本側は『経済や貿易などで何か困っていることがあれば伝える。どんな話があったか、後で内々に共有する』と声をかけてくれていた」と明かす。そして、「今回の王氏とのやりとりについて、非公式に韓日間で情報共有することはできるだろう」と言う。幸い、尹政権の外交安全保障ラインには日本とパイプのある高官が多い。これを生かさない手はない。

 ペロシ氏の訪台を前に米中首脳が電話協議をしたが、緊張の高まりを防ぐことはできなかった。7月にワシントンを訪れた笹川平和財団の渡部恒雄上席研究員は、「米国の国内政治としては、中国とコミュニケーションチャンネルを作るとは言いにくいのが現状」と解説する。バイデン米政権は中国との関係悪化は望んでいないものの、政界では対中強硬の声が勝ってしまうという。

 「中国とのコミュニケーション役を日韓が共にやれたらいい」。渡部氏のアイデアがいずれ実現することを期待したい。【大貫智子】

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