7月21日、キーウの住宅街で、叔母ルスラナさんと抱き合うカリーナ・クラフチュクちゃん=冨田大介撮影
ロシアによるウクライナ侵略が続く中、露軍による攻撃などで親を失う子供たちが増え続けている。心の傷に加え、財政的な困難に直面するケースもある。支援団体も予算や人員に限界があり、十分な支援が難しい状況だ。(キーウ 安田信介)
キーウの団地にある公園で7月下旬、友だちと遊具を跳び回り、歓声を上げるカリーナ・クラフチュクちゃん(6)に会った。
北部チェルニヒウで暮らしていたカリーナちゃんは3月上旬、避難先の祖母宅から車で自宅へ戻る道中、露軍の襲撃を受け、父オレクサンドルさん(当時32歳)と母ユリアさん(同30歳)を亡くした。
後部座席にいたカリーナちゃんは、衝撃で車外に投げ出されたとみられ、後から来た親戚に救助された。今も背中に残る2センチほどのやけどの赤い痕が痛々しい。
4月、カリーナちゃんをキーウの自宅に引き取った叔母のルスラナさん(21)は、涙ながらに両親の死を伝えた。カリーナちゃんは「心配しないで、私は泣かない」と逆にルスラナさんを慰める気丈さを見せたという。
(写真:読売新聞)
しかし、深い心の傷は隠しようもなかった。週に数回、夜中に目を覚まし、無言で涙を流した。体中にかゆみを訴え、あちこちかきむしった。長旅で疲れたり、感情的になったりすると眠れなくなったという。
記者が両親のことを尋ねると、カリーナちゃんは「時々、会いたくなる。一緒に家の近くの道を歩いたことや、ベッドで寝たことを思い出す」とうつむきながら話した。
最近では、ルスラナさんや夫を「ママ」「パパ」と呼ぶようになった。今楽しみにしているのは、9月に小学校に入学することだという。
激しい戦闘に見舞われた北部ブチャに、アドリアナ・サムチェンコさん(18)を訪ねた。母オルハさん(37)によると、アドリアナさんは3月上旬に父イホールさん(当時40歳)を亡くしてから笑顔が減り、黙り込むことが増えた。イホールさんは近くに住む義母の家に薬を届けに行った帰路、露側の兵士に撃たれたらしい。