映画製作会社アルタミラピクチャーズ破産:周防正行監督と草刈民代夫妻の夢は?

日本の映画界に衝撃が走っています。名作『Shall we ダンス?』をはじめ、『ウォーターボーイズ』など数々のヒット作を手がけてきた映画製作プロダクション「アルタミラピクチャーズ」が、経営難により破産手続きを開始したと報じられました。この突然の事態は、同社の専務取締役を務めていた周防正行監督(68)とその妻であり女優の草刈民代(60)夫妻の活動、さらには日本映画業界全体に大きな影を落としています。特に、周防監督が6年ぶりにメガホンを取るはずだった最新作の撮影中止、そして出演者やスタッフがギャラを失う可能性に直面するなど、その影響は甚大です。

『Shall we ダンス?』を生んだアルタミラピクチャーズ、破産手続き開始へ

2024年10月16日、映画製作会社アルタミラピクチャーズが東京地裁から破産手続き開始決定を受けたことが明らかになりました。関係者によると、10月中旬には裁判所からの通知が届き、破産の事実が正式に伝えられています。1993年に設立された同社は、周防正行監督が専務取締役として経営陣の一角を担い、日本映画史に残る名作を数多く世に送り出してきました。

しかし、近年はヒット作に恵まれず、経営状況は悪化の一途をたどっていたといいます。全盛期の2009年5月期には約3億円の売上高を記録しましたが、2025年5月期には約5千400万円まで減少する見込みとなり、資金繰りが限界に達したとされています。会社の公式X(旧Twitter)では、これまで製作した作品の映像を編集した約3分の動画とともに、《人生で少しでもアルタミラ作品に触れた皆さんに、ありがとうございました。いつまでも映画に夢を!》という“最後のメッセージ”が投稿され、多くの映画ファンに惜しまれました。

最新作中止の痛手:周防正行監督を襲った試練

アルタミラピクチャーズの破産は、周防正行監督の創作活動に大きな打撃を与えています。周防監督は、2019年の『カツベン!』以来、6年ぶりに映画のメガホンを取るべく、敬愛する小津安二郎監督の青年時代を描く作品の製作準備を進めていました。しかし、この最新作はクランクインの約1カ月前に、主演を予定していた目黒蓮さんが突然降板するというトラブルが発生。最終的には撮影が中止となり、監督は深い落胆の中にいたと報じられています。

当初は出演者やスタッフに対し「お約束していたギャラは支払う」との説明があったものの、まさかの破産により、多くの関係者が途方に暮れる事態となっています。これは、周防監督自身の長年の夢が打ち砕かれただけでなく、彼を信じて集まった映画製作のプロフェッショナルたちにも大きな影響を及ぼしています。

映画監督周防正行氏の代表作『Shall we ダンス?』のポスター映画監督周防正行氏の代表作『Shall we ダンス?』のポスター

草刈民代の「生涯現役」と夫婦の夢の行方

周防監督の妻で、女優の草刈民代(60)もまた、今回の事態に大きなショックを受けているといいます。アルタミラピクチャーズ最大のヒット作である『Shall we ダンス?』は、周防監督と草刈さんが出会い、結婚するきっかけとなった記念碑的作品でもありました。周防監督自身も「気づいたらプロポーズしていた」と語るほど、二人の絆を深めた作品です。

今年還暦を迎えた草刈さんは、昨年大手芸能事務所から独立し、フリーランスとして新たな活動を始めたばかりでした。2024年9月26日号の『週刊新潮』のインタビューでは、「4月からは、全部自分でやっています。マネージャーもいません」「60代は、もう自分でやっていくのでいいのかな」と語り、バレエ監修・指導や深夜ドラマ出演など、多方面で意欲的に活躍していました。

夫婦の知人によると、草刈さんは周防監督の映画に「夫婦共演」することを強く望んでおり、『カツベン!』でもその夢を実現させています。しかし、夫の“製作の場”が消滅したことで、二人が共に思い描いていた「老後の夢」が大きく揺らいでいるのではないかと心配されています。

周防監督、直撃に口閉ざす「何もありませんので……」

今回の破産に関する報道が出る直前の10月16日、本誌は周防監督に現在の心境を尋ねるべく直撃取材を行いました。当初は無言だった周防監督ですが、記者の問いかけが続くと、わずかに笑みを見せながら「僕から言うことは何もありませんので……」とだけ語り、多くを語ることはありませんでした。彼の言葉少なな返答は、今回の事態の重さを物語っているようでした。

アルタミラピクチャーズ破産について語る周防正行監督の横顔アルタミラピクチャーズ破産について語る周防正行監督の横顔

まとめ:日本映画界の課題と夫婦の再起

アルタミラピクチャーズの破産は、長引くコロナ禍や配信サービスの台頭など、変革期にある日本映画業界が抱える構造的な課題を浮き彫りにしました。経営の難しさ、資金調達の厳しさ、そしてインディペンデント系の製作会社の脆弱性が露呈した形です。

周防正行監督と草刈民代夫妻は、これまで数々の困難を乗り越え、映画を通して深い絆を築いてきました。「いつまで必要とされるかは、自分では決められない」と語っていた草刈さん。生涯現役を願いながらも、夫の“製作の場”を失った今、二人の今後の活動、特に周防監督がどのようにして“起死回生”の一歩を踏み出すのか、日本映画界、そして多くのファンがその行方を見守っています。

参考文献