ウクライナ国旗
ウクライナが南部奪還に向け本格的な攻撃を開始したのか。同国メディアは29日、ウクライナ軍が南部ヘルソン州でロシア軍の「第1防衛線」を突破したと伝えた。米国が供与の高機動ロケット砲システム「ハイマース」が威力を発揮しているとみられる。ウクライナ軍の報道官は「敵は強力だ。気を抜くのは早い」と述べ、着実に作戦を進める考えを示した。
【写真】米軍のロケットシステム「ハイマース」
ウクライナ軍は同日、ロシア軍が補給路として利用してきた州内のドニエプル川に架かる橋をハイマースでほぼ全て破壊したと明らかにした。
報道官は「反撃は敵を疲弊させ、前進の機会を与えていない。われわれは今日、複数方面への攻撃を開始した」と主張。最近の攻撃でロシア軍は南部の補給路を断たれ、1週間でロシア軍の10以上の弾薬庫を攻撃したと説明した。
ウクライナ軍部隊は、ロシアの武装集団「DPR」の第109連隊が攻撃を受け、自陣を撤退したとフェイスブックで伝え、動画を公開した。
ロシア側はタス通信に「ウクライナ軍の攻撃はある種の幻想で、われわれは平穏に暮らしている」と反論した。
ヘルソン州は侵攻初期にロシア軍が全域制圧を宣言したが、その後、ウクライナ軍が一部の集落を奪還するなど反攻に転じていた。
元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は「第1防衛線は最前線で、突破すればロシア軍を取り囲み弱体化することができる。『M14/P47』と呼ばれる高速道路を占領することでドニエプル川西岸のロシア軍を包囲でき、兵站(へいたん)物資も届かなくなる。ウクライナ軍はハイマースなどで弾薬庫など兵站施設を破壊し、ロシア軍全体の防御力が落ちたとの認識で反攻に出たのだろう」と解説する。
ウクライナの攻勢について渡部氏は「ウクライナ軍も歩兵、戦車などの機甲、砲兵戦力が足りず、難しい作戦ではあるが、ロシア軍を包囲し撃破する作戦を今の時期に開始したことは大きな意味がある」と分析した。