
(写真:朝鮮日報日本語版)
韓国の8月の貿易赤字は95億ドルで、過去最大の貿易赤字を出した1996年通年での赤字幅(206億ドル)のほぼ半分に達する規模だ。金額も衝撃的だが、ウォン安が進行する状況でも輸出が鈍化し、5カ月連続の赤字となっていることに懸念が高まっている。ウォン安が韓国の輸出を増やし、貿易収支の改善に貢献した通貨危機や世界的な金融危機の当時とは全く異なる様相を呈している。世界的に景気低迷の懸念が高まり、需要が減少しているほか、輸入のうち大きな割合を占めるエネルギーの価格が急騰し、危機が深刻化していると分析されている。
【グラフ】韓国の月別貿易収支(2022年)
■実体経済の危機…対中貿易は転換点
前例のない貿易赤字を巡っては、「コロナによるサプライチェーン崩壊にロシアのウクライナ侵攻によるショックが加わり、貿易への依存度が大きく、外部の不確定要素に弱い韓国経済が直撃を受けた」という分析が聞かれる。液化天然ガス(LNG)、石油、石炭をはじめとする原材料の価格が急騰し、輸入負担が高まった状況で、輸出の道まで閉ざされれば、貿易収支の赤字基調から脱却する道筋が見えない。
8月の3大エネルギー源(原油・ガス・石炭)の輸入額は185億2000万ドルで、昨年8月(96億6000万ドル)の2倍に達した。エネルギー輸入の増加額は先月の貿易赤字の90%に相当する。エネルギーの国際価格が昨年の水準を維持していたとすれば、赤字は微々たるものだったことを示している。北半球が冬を迎え、エネルギー価格は一段高が予想されることから、輸入負担はさらに高まりそうだ。ソウル科学技術大の劉昇勲(ユ・スンフン)教授は「年初時点でMMBtu(英国熱量単位)当たり30ドル台だった北東アジアLNG価格指標(JKM)が先週時点で70ドルを超えたのに続き、年内にも100ドルまで急騰するとの見方が出ている」と指摘した。国際貿易通商研究院のチョ・サンヒョン院長は「金融部門から触発された過去の危機とは異なり、今回の危機は地政学的問題に端を発し、エネルギー、穀物、サプライチェーンなど実体経済に全方位的に影響を及ぼしている」と診断した。