インド産のダイヤモンド「コイヌール」のレプリカ=2002年1月、インド東部コルカタ(AFP時事)
【ニューデリー時事】エリザベス英女王死去を機に、英王室の王冠に飾られたダイヤモンドの返還を求める声が、原産国インドで再燃している。
「コイヌール」と名付けられた世界最古とも言われるダイヤで、インドでは独立以来、所有権に関する議論がたびたび浮上してきた。
「インドから盗まれた」「英国が働いた歴史的略奪の証しだ」。8日の女王死去後、かつて英国の植民地だったインドで「コイヌール」がツイッターのトレンド入りした。19日の国葬を前に、英国に返還を求める署名運動もインターネット上で始まった。
コイヌールはペルシャ語で「光の山」を意味する。発掘時期は不明だが、インドを支配したムガール帝国の創始者が16世紀に記した回想録に、このダイヤを示すとみられる記述がある。周辺国を経て19世紀に英国がインド征服を完成させていく中で、ビクトリア女王に「寄贈」されたとされる。
英国に渡った後は105カラットの重さにカットされ、王冠の宝石として用いられた。エリザベス女王自身は生前、この王冠を身に着けず、ロンドン塔に展示されている。インドの度重なる返還要求に、英国は応じていない。英領インドから独立したパキスタンや、アフガニスタンの旧タリバン政権も返還を訴えたことがある。
言い伝えでは、コイヌールは男性が所有すると破滅する。英紙デーリー・メール(電子版)は、チャールズ国王の即位を受け、コイヌールの次の持ち主はカミラ王妃になるだろうと伝えている。