ウクライナ東部ドネツク州の自宅アパートで投票する住民(23日)=AP
【キーウ=上杉洋司】ロシアへの一方的な併合に向け、親ロシア派勢力が23日から「住民投票」を行っているウクライナ南部ヘルソン州の住民男性(28)がSNSを通じ、本紙の取材に応じた。銃で武装した親露派兵が1軒ずつ住宅を訪問し、「事実上、脅して投票を強要している」と証言した。ウクライナや米欧が「偽りの住民投票」と非難する中、少しでも投票の実績を積み上げ、正当性を主張する狙いとみられる。
男性によると、ヘルソン市中心部では23日以降、選挙管理委員会職員が複数の親露派兵士を連れて住宅の中にまで入り、住民に投票へ行くよう促している。
ヘルソンには元々「親露派」だった住民もいるが、露軍兵による略奪の横行でロシアへの支持は揺らいでいる。ウクライナ軍がヘルソンを奪還した際、投票が問題視されることを懸念する人も多いという。男性は、「多くの人が、投票を棄権すると話している」としたが、反ロシア的な言動をすると、当局に拘束されることが日常化しており、投票を拒否できない状況という。
ロシアによる侵略前のヘルソン市の人口は約30万人だったが、現在は半減したとみられる。男性は、選管業務にあたる知人の話として、住民投票が急きょ決まったため、投票用紙が大幅に不足していると述べた。その上で、「まともな集計をせず、賛成多数の結果を発表するのは目に見えている。ロシアのいつものやり口だ」と批判した。
住民投票は、南部のヘルソン、ザポリージャ、東部のドネツク、ルハンスクの計4州の一部地域で27日まで行われる。