2025年7月1日午前、東京都豊島区東池袋の高層ビル「サンシャイン60」31階にある大手法律事務所「アディーレ法律事務所」内で、従業員の芳野大樹さん(36)が同僚の渡辺玲人容疑者(50)に刃物で刺され死亡する事件が発生した。事件発生後、警視庁は渡辺容疑者を殺人未遂容疑で緊急逮捕し、現在詳しい動機などを調べている。
事件発生と逮捕
警視庁によると、事件は1日午前11時45分ごろに発生したとみられる。事務所内にて、渡辺容疑者が芳野さんの首を折りたたみナイフ(刃渡り約9センチ)で複数回突き刺すなどしたとされる。午前11時50分ごろ、「男性従業員が刃物で刺された」との110番通報が警視庁に入り、事件が発覚。被害者の芳野さんは、病院に搬送されたが、死亡が確認された。
緊急逮捕された渡辺容疑者は、当初の殺人未遂容疑について容疑を認めており、犯行の動機に関して「(芳野さんに)以前から恨みがあり、我慢の限界だった。自宅から持ってきたナイフで刺し、彼に痛みを味わわせたかった。死んでも構わないと思った」と供述しているという。警視庁は供述内容の信憑性を確認するとともに、容疑を殺人容疑に切り替えて二人の間に具体的にどのようなトラブルがあったのか、過去の経緯を含めて詳細な捜査を進める方針。犯行は、芳野さんが椅子に座っているところを、渡辺容疑者が背後から襲った可能性が高いとみられている。
犯行後の動きと事務所背景
渡辺容疑者は犯行後、現場であるサンシャイン60の31階から徒歩で移動を開始。事件発生から間もない正午ごろ、現場から約500メートルほど離れたJR池袋駅東口近くの交番に自ら出頭した。その際、所持していたリュックサックからは、犯行に使われたとみられる折りたたみナイフのほか、さらに2本のナイフが見つかっており、計画性についても捜査の焦点となっている。
事件現場近く、東京都豊島区東池袋3のサンシャイン60周辺で捜査を行う警察官ら
被害者の勤務先であるアディーレ法律事務所は、サンシャイン60に本店を置く大手法律事務所で、過払い金返還請求などで広く知られている。ホームページによると、全国に65の拠点を持ち、235人以上の弁護士が所属する大規模な組織である。しかし、同事務所は2017年に、過払い金返還請求に関する着手金の無料キャンペーン表示が景品表示法に違反する不当表示にあたるとして、東京弁護士会から業務停止2カ月の懲戒処分を受けた過去がある。
今回の痛ましい事件を受け、アディーレ法律事務所は「亡くなられた従業員のご冥福を心よりお祈り申し上げるとともに、ご遺族の皆様に深くお詫び申し上げます。捜査には誠心誠意協力し、事実関係が明らかになり次第、速やかにご報告いたします」とのコメントを発表した。
事件発生現場と同じサンシャイン60の31階で働く20代の女性会社員は、事件発生直後の状況について「上司から、同じフロアで事件があり、犯人が逃走している可能性があるので絶対に外に出ないようにと指示がありました」と、当時の緊迫した様子を語り、当惑した表情を見せた。高層ビル内で起きた白昼の凶行に、周囲には不安が広がっている。
結び
東京都心の高層ビル内で起きた今回の同僚刺殺事件は、多くの人々に衝撃を与えている。著名な法律事務所内で白昼に発生した悲劇は、職場における人間関係の難しさや、深い恨みが引き起こす暴力の恐ろしさを改めて浮き彫りにした。逮捕された渡辺容疑者の詳細な動機解明とともに、警視庁による事件の全容解明が待たれる。
【参考】
毎日新聞 (記事内容に基づく)
警視庁巣鴨署 (捜査情報)
アディーレ法律事務所 (発表コメント)