ウクライナ・ドニエプル川のカホフカダムの衛星写真=2022年10月18日撮影(米マクサー・テクノロジーズ提供・ロイター)
ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、ロシアが一方的に「併合」を宣言した南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所のダムに「爆弾を仕掛けた」との情報があると指摘した。欧州連合(EU)首脳会議でのオンライン演説で述べた。爆破された場合、数十万人の市民が被害を受ける可能性があるという。
ロイター通信などによると、ゼレンスキー氏は洪水が起きた場合、南部の80以上の集落が被害を受けるほか、ロシアが占拠するザポロジエ原発で使う冷却水が取水できなくなる可能性があると主張した。一方で、2014年にロシアが一方的に「併合」した南部クリミアのかんがい施設も破壊される恐れがあるという。
露軍のスロビキン総司令官はこれに先立つ18日、ウクライナ側が「ミサイルでダムを破壊する準備をしている」と主張している。米シンクタンク「戦争研究所」は20日の情勢報告で、ロシアがウクライナの攻撃に見せかけた「偽旗作戦」の準備をしていると指摘。ヘルソン州での劣勢からロシア国民の「注意をそらす」ことを狙っている可能性があるとしている。
ヘルソン州はロシアが20日に戒厳令を発動した4州の一つ。9月ごろからウクライナ軍が反転攻勢を仕掛け、ドニエプル川の西岸地域で集落を次々と奪還しているほか、州都ヘルソンにも迫っている。スロビキン氏は18日、ヘルソン州の状況は「既に困難」であり、「難しい決断も排除しない」と述べている。ペスコフ露大統領報道官は21日の記者会見で、露軍がヘルソン州から撤退する可能性について「国防省に聞いてほしい」と述べ、回答を避けた。【エルサレム三木幸治】