ホワイトハウスを出発するドナルド・トランプ氏=2020年1月31日
(CNN) ドナルド・トランプ氏にとっては勝つことがすべてだ。
「我々はたくさんの勝利を収めるだろう」とは、2016年の選挙戦での同氏の発言だ。「みなさんは勝つことに嫌気がさすだろう。『大統領お願いです、もう頭が痛いです。お願いですから、こんなにたくさん勝たないでください』と言われても、私は『いや、アメリカを再び偉大にしなくては』と答えるだろう。『お願いですから』『いやいや。まだまだ勝ち続ける』とね」
トランプ氏の人物像をざっくりひとことで言うなら――同名の曲を持つDJキャレドには申し訳ないが――勝つことがすべてだ。本人に言わせれば、自分は人生における究極の勝ち組で――金はある! 成功もしている! 有名人だ!――これを認めないのは自分を憎む連中か、負け組だけということになる。
ただし、少なくとも政治の世界では、トランプ氏は白星よりも黒星のほうがはるかに多い。たしかに16年の大統領選では当選したが、それ以降の流れは次の通りだ。
18年、共和党が下院で過半数を奪われる。
20年、トランプ氏が大統領選挙で落選。
21年、共和党が上院で過半数を奪われる。
22年、中間選挙で共和党に寄せられる高い期待にもかかわらず、著しくふるわなかった。
こうしたムラのある戦績を、米紙ウォールストリート・ジャーナルの編集委員会も最新の論説記事で深く掘り下げている。共和党はそろそろ前大統領を離れて前に進むべき時期だと主張している。
「トランプ氏は22年の選挙を台無しにした」と論説記事は書き、それが上院における民主党天下をさらに2年延ばした可能性を指摘している。「トランプ氏は大統領時代、減税や規制緩和など政治的成功を収めたが、共和党を次から次へと政治的失敗へと導いている」
まさにその通りだ。
トランプ氏が共和党にアピールを続ける状況に最も困惑を覚える点の一つは――少なくとも筆者にはそう思われる――明らかに散々な結果にもかかわらず、同氏が自身の権力の座を維持できる能力だ。全米出口調査によると、中間選挙で同氏に好意的だった有権者はわずか39%しかいない。
共和党リーダーとしてのトランプ氏の成績について、疑問を挟む余地は何ももない。同氏は何度となく、かなりの後退と残念な結果をもたらしてきた。共和党支持者でもとくに過激な層以外では求心力が限られる候補者を推薦し、その結果勝てたはずの選挙で接戦にすら持ち込むことができなかった。穏健派や無党派、しまいには多くのふつうの共和党員までも遠ざけてしまった。
もし他の政治家がトランプ氏の豪語するような選挙結果しか残せていないとしたら、政治家がこぞってそんな人物に服従し続ける状況は到底想像できない。そうした政治家は排除して、敗戦の流れを一掃しようとする動きが出てくるだろう。
なぜトランプ氏の場合はそうならないのか? 少なくともその理由のひとつは、トランプ氏が決して負けを認めないことだ――20年の選挙であれ、前述したいずれの選挙戦であれ。
「ある意味、昨日の選挙はいささか残念な結果だったが、私個人からすれば非常に大きな勝利だった――本選挙で219勝16敗――これほどの結果を残した人間がいままでいただろうか」。9日、トランプ氏は自身が運営するウェブサイト「トゥルース・ソーシャル」にこう投稿した。
だが、事実は事実だ。トランプ氏は16年に驚がくの勝利をあげて以来、毎回敗北を喫している。目下の問題は、共和党有権者がその事実に目を覚ますかどうかだ。
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本稿はクリス・シリザ編集主幹による分析記事です。