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新型コロナの感染拡大以降、2年あまり国外に出ることは無かった習近平国家主席だったが、10月に行われた中国共産党大会で3期目入りを果たし、権力基盤を固めて以降は外交活動を本格化。インドネシア・バリで開かれたG20=主要20か国・地域の首脳会議と、タイ・バンコクで開かれたAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議では、6日間で20人以上と会談した。
今回、私は北京支局の記者として習氏の動きを追いかけてきたが、なかでも目立ったのが、習氏の「笑顔」だった。“友好モード”が全面に出た外遊の背景にはいったい何があったのだろうか。
【写真を見る】中国の“戦狼外交”はどこへ!?記者が見た終始“友好モード”の習氏外遊
■“最大の懸案”アメリカとの会談では手応え
今回、習氏にとって最大の懸案だったのは、間違いなくアメリカとの会談だったに違いない。11月14日にバリに到着して真っ先に会談したのがバイデン米大統領だった。
同時通訳を入れての議論は3時間にも及んだ。台湾問題については「核心的利益だ」とした上で、「越えてはならない最重要のレッドラインだ」と強くけん制。一方、意思疎通を維持して高官協議を再開し、ブリンケン米国務長官が年明け、中国を訪問することでは合意した。台湾問題をめぐる溝は埋まらなかったが、対立のエスカレートには一定の歯止めがかかった形だ。
習氏がこの会談をどう評価したのかは、5日後のAPECの会場でハリス副大統領に語った言葉からうかがえる。
「とても戦略的かつ建設的で、これからの中米関係を導く重要な意義があった」
習氏はこう話した上で関係改善への意欲を改めて示した。
■“友好モード”の背景に…対米対策やEUとの関係悪化への危機感?
バイデン米大統領との会談後、習氏は韓国の大統領や関係が悪化していたオーストラリアの首相とも相次いで会談し、いずれの場でも関係改善への意欲を示した。また、日本とも経済分野などでハイレベルの対話再開で合意するなど協調姿勢を見せている。韓国、オーストラリア、日本…一連の会談には、アメリカの同盟国にくさびを打ち込みたい狙いが透けて見える。
また、フランスやイタリア、オランダとの会談では、「ヨーロッパと中国の間の対話と協力を積極的に推進する上で重要な役割を果たしてほしい」などと述べていて、人権問題などで関係が悪化するヨーロッパ諸国との関係改善を模索していることが伺える。
さらに、太平洋島しょ国であるパプアニューギニアやこの地域で影響力が大きいニュージーランドに対しては「中国の太平洋島しょ国に対する政策は平和を目的としたものだ」などの立場を示した。この地域では、中国が安全保障の分野にまで影響力を拡大させようとしていることに対して懸念が高まっていて、それを払しょくしたい狙いとみられる。
中国の外交といえば「戦狼外交」と呼ばれる対外強硬姿勢が有名だが、今回の外遊では「戦狼外交」は影をひそめ、対話や協力を全面に出す穏やかな外交姿勢が目立った。
ただ、全ての会談が友好的に行われたわけではなかった。