ロシア国旗
ロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO、旧ソ連6カ国で構成)は23日、アルメニアの首都エレバンで首脳会議を開いた。プーチン露大統領にウクライナとの停戦を求める声が上がったほか、アルメニアのパシニャン首相がロシアやCSTOに不満を述べ、共同宣言への署名を拒否する一幕もあった。ウクライナ侵略で進んだロシアの求心力の低下と、CSTOの足並みの乱れが改めて示唆された形だ。
【写真】ウクライナ軍の攻撃で破壊されたとするロシア軍陣地
ベラルーシのルカシェンコ大統領はウクライナ情勢について「停戦交渉を始めるべきだ」と指摘。「メディアには最近、ロシアがウクライナで敗戦すればCSTOは崩壊するとの論調がある」とし、「CSTOは存続し続けるが、団結が必要だ」と述べた。ウクライナ侵略がCSTO諸国を動揺させていることを暗に認めたものだ。
カザフスタンのトカエフ大統領も「ウクライナ情勢は和平を模索するときが来ている」と訴えた。
会議では一方、パシニャン氏が「過去2年間でアルメニアはアゼルバイジャンから3回攻撃を受けた」と主張。「わが国のCSTO加盟がアゼルバイジャンに攻撃を思いとどまらせなかったのは遺憾だ」「攻撃はロシアの停戦維持部隊の存在下で行われた」と指摘した上で、「こうした状況では共同宣言に署名できない」と述べた。
「逆風」にさらされた形のプーチン氏は、CSTOが「第二次世界大戦での勝利という共通の記憶」で結びついているとし、「ロシアはCSTO諸国に必要な支援を提供し、同盟の強化に全力で貢献する」と強調。パシニャン氏との個別会談でも「われわれは信頼と深いルーツを持つ同盟国だ」と述べるなど、CSTOの結束を維持したい考えを鮮明にした。
タス通信によると、ペスコフ露大統領報道官は会議後、「アルメニアはCSTOを離脱しない」と指摘。同盟が揺らいでいるとの観測の打ち消しに追われた。
アルメニアとアゼルバイジャンの間では2020年秋、係争地ナゴルノカラバフ自治州を巡る大規模紛争が発生。ロシアの仲介で停戦が成立したが、アルメニアは同州の実効支配地域の多くを失った。アルメニアとアゼルバイジャン間では今年9月にも衝突が発生し、CSTOはアルメニアの介入要請を事実上拒否。ロシアが友好国アゼルバイジャンとの対立を避けたとされ、アルメニアはロシアへの不満を強めていた。
9月にはCSTO加盟国であるキルギスとタジキスタンの間でも大規模な武力衝突が発生。一連の衝突の背景には、CSTOへのロシアの影響力の低下があるとの見方も出ている。
CSTOはロシアとベラルーシ、アルメニア、カザフ、キルギス、タジクの6カ国で構成。ただ、ウクライナ侵略ではベラルーシを除く各国がロシアから一定の距離を置く動きを強めるなど、足並みの乱れが指摘されてきた。