中国「愛国大V」有名ネット民に批判噴出…“糾弾”で風向きが一変


中国「愛国大V」有名ネット民に批判噴出…“糾弾”で風向きが一変

中国のSNSで反日世論をあおった6人を「岡本六君子」とやゆする投稿=短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」から

【写真3枚】中国のSNSで反日世論をあおった6人をやゆする投稿

 一昨年の夏、北京特派員として中国に着任して意外だったことの一つが、日本に好意的な印象を持っている市民の多さだ。強硬で攻撃的な中国政府の「戦狼(せんろう)外交」に呼応したような反日的なネット世論とは懸け離れている。

 反日的な言説を繰り返すのはどんな人物なのか。中国ではネット上の掲示板やSNSへの書き込みに実名認証が義務付けられているが、表面上は匿名表記のため素顔に迫るのは難しい。

 ただ、その一端を知るネット上の騒動があった。発端は8月中旬。日本の繁華街や商店街を再現した江蘇省蘇州市の「日本街」で日本の人気漫画の主人公をまねて浴衣を着ていた中国人女性が、公共秩序騒乱容疑で警察に連行される動画が出回った。

 中国のSNSでは今夏、日本文化を称賛する若者を「精日(精神的日本人)」とやゆする投稿が続出。反日感情が高まり、日本の夏祭りや盆踊りをイメージした催しは次々と中止に追い込まれた。その急先鋒(せんぽう)が「愛国大V」と呼ばれた6人の有名ネット民だった。

 しかし、ある“糾弾”で風向きが一変した。6人が過去にSNSで日本のコンドーム製造大手オカモトの製品を宣伝していた事実を突き止めたネット利用者が「中国人が日本の着物を着るだけで有罪なら、少子化が深刻な中国で日本の避妊具を宣伝するのは亡国の罪ではないか」と反論した。

 同社の避妊具は中国でも根強い人気がある。コンビニで広く販売されるなど企業の認知度が高いことも相まって、6人を「岡本六君子」と呼び、冷ややかな目が向けられるようになった。六君子とは清朝末期の政治改革運動「戊戌(ぼじゅつ)の変法」で粛清された6人の官僚「戊戌六君子」にちなむ。

 ネット上では、6人がフォロワーを増やして金もうけにつなげるため、故意に「愛国」「反日」「反米」を主張しているとの批判が噴出。「愛国を飯の種にしている」という意味のハッシュタグ(検索目印)も登場した。

 さらに、浴衣を着た女性を拘束した警察に「どういう服を着るかは個人の自由だ」と反発する声も高まり、反日ムードは一気に沈静化。北京の外交筋は「こうしたネットの論争が、日中関係のさらなる悪化に歯止めをかけた」と分析する。

 8月下旬、習近平国家主席は新型コロナウイルスに感染した岸田文雄首相に見舞いの電報を送り「新時代の求めに合う中日関係の構築を一緒に推し進めたい」と呼びかけた。11月中旬には約3年ぶりの日中首脳の対面会談も実現した。

 11月末、「ゼロコロナ」政策への抗議デモがSNSを介して各地に広がり政策の大幅緩和につながったように、中国政府もネットを完全にはコントロールできていない。習氏が絶対的な権力を握る中国だが、ネット世論の力は侮れなくなっている。



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