薄氷だったG20首脳宣言 温暖化、WTO改革で対立


(左から)トランプ大統領、安倍首相、習国家主席=28日、大阪(AP)

 6月29日に閉幕した20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)は、各国・地域の利害が複雑に絡み合う中、「大阪首脳宣言」の取りまとめは難航した。議長国の日本は意見の集約に奔走し、“薄氷”の宣言採択だった。

 「気候変動に関する宣言をまとめよう。シェルパ(首脳の側近)に指示を出してほしい」。29日午前、首脳宣言の取りまとめに危機感を抱いた安倍晋三首相は、各首脳に議場でこう呼びかけた。

 気候変動で主張が対立したのは、地球温暖化防止の国際的枠組み「パリ協定」の文言を盛り込むかどうかだった。フランスを中心に欧州各国がパリ協定にこだわりを見せる一方、パリ協定からの脱退を宣言している米国が難色を示した。

 結局、宣言では「パリ協定の不可逆性を確認」と明記。その上で「米国のパリ協定からの脱退の決定を再確認する」と併記することで欧米の理解を得た。

 米中貿易摩擦をめぐる文言でも紛糾した。米中それぞれが自国の批判と取られかねない表現に強く反発。日本は「片方だけが批判されていると誤解されないよう」(政府高官)双方の問題点を指摘することで、米中から譲歩を引き出した。

 米国は世界貿易機関(WTO)への不信感を背景に、最終審に当たる上級委員会の委員の任命を拒否。上級委員の欠員により、WTOの紛争処理機能の不全が危惧されており、欧州を中心に米国への批判が高まっている。このためWTO改革をめぐって米国は「紛争処理機能の改善」という趣旨の文言は、自国批判にあたると主張してきた。

 だが、日本はWTO改革の重要性を訴え、G20として初めて「紛争解決制度の機能に関し行動が必要だ」との表現を首脳宣言に盛り込んだ。(大柳聡庸)



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