モノポリー状態の米防衛産業界、言い値での調達を強要される国防総省

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米CBSの番組に出演した元国防次官は「ロッキード・マーティンも、ボーイングも、レイセオンも、トランスダイムも国防総省や納税者に過剰請求をおこなっている犯罪者の1人だ」と明かし、防衛産業企業による価格吊り上げの実態を暴露した。

ロッキード・マーティンも、ボーイングも、レイセオンもパトリオットシステムで国防総省と同盟国に過剰請求

CBSの60Minutesに出演したシェイ・アサド氏はレイセオンで契約交渉を担当する副社長を経て国防総省で働き始め、2011年には調達担当する国防次官に昇進し、米軍が調達するあらゆる装備やサービスの契約に関わってきた人物で、約40年間も武器契約の交渉に携わってきた経験から「国防総省は殆どの調達で過剰な支払いを行っており、ロッキード・マーティンも、ボーイングも、レイセオンも、トランスダイムも国防総省や納税者に過剰請求をおこなっている犯罪者の1人だ」と明かし注目を集めている。

モノポリー状態の米防衛産業界、言い値での調達を強要される国防総省

出典:Lockheed Martin

アサド氏は2015年にパトリオットシステムの契約見直しを指示、陸軍の担当者はPAC-3弾についてロッキード・マーティンと下請け企業(ボーイング)が国防総省と同盟国に数億ドルの過剰請求(7年間で数億ドル)を行っていたことを発見、ロッキード・マーティンとの契約を改定して国防総省は5.5億ドルを節約することに成功、さらに古巣のレイセオンがパトリオットシステムのレーダーと地上装置の製造コストを大幅に膨らませていた事実も告発、現在司法省が調査を行っている最中だがレイセオンは最大3億ドル分の責任を負う可能性があると投資家に説明しているらしい。

このような防衛産業の価格吊り上げについてアサド氏は「当該装備の供給元が1つしなく類似装備の供給=競争がないことが原因で、1993年に国防総省がコスト削減のため防衛産業の合併を促したことが問題(51の企業が5の巨大企業に再編)の根源だ。さらに国防総省も契約業務に関わる職員13万人(監視役、交渉役、技術者、プログラムマネージャーなど)を50%以上も削減し、企業に自らを監視(品質やコストの証明)する前例のない自由裁量権を認めてしまった」と指摘。

モノポリー状態の米防衛産業界、言い値での調達を強要される国防総省

出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Rachel K. Young

国防総省は組織のスリム化で大幅な経費削減に成功したように見えたが、直ぐに全ての調達コストが信じられないスピードで上昇し始め、1991年に2.5万ドルで調達していたスティンガーミサイルは現在40万ドル以上もかかり、インフレ率や多少の性能改良を加味しても値上がり幅は7倍以上で、空軍で装備調達を担当してきたボグダン元中将も「産業界は競争の中で生き残って利益を上げるために働き、我々は可能な限り早く安価に装備を手に入れることを考えているため、そもそも両者は対極の存在なのだ」と述べている。

60Minutesのビル・ウィテカー氏が「しかし我々の社会システム上、利益を得ることに何も問題はない」と指摘すると、ボグダン元中将は「確かにそうだが、しかし極端に言えば産業界は政府の利益のため最善の決定を下さないかもしれない。この影響を我々は感じはじめている過ぎない」と主張し、自身が関わったF-35の調達を例に上げて「最終的にF-35のサポートとメンテナンスに1兆3,000億ドル=約182兆円の資金がかかる可能性がある」と明かした。

モノポリー状態の米防衛産業界、言い値での調達を強要される国防総省

出典:U.S. Air Force photo by Courtesy by Kyle Larson

この問題はケンドール長官が言及した「買収上の悪習慣」に関連する話で、F-35プログラムを獲得したロッキード・マーティンは機体の重要なデータを所有する権利が認められているため「製造」「運用」「維持」「アップグレード」に関する作業を独占でき、ウィテカー氏は「何十億ドルもの金を支払って作った戦闘機は国防総省のものではないのか?」と尋ねると「兵器システム自体は国防総省に属しているものの、設計に関するデータは我々のものではない」と述べているのが興味深い。

買収上の悪習慣はF-35プログラムに限った話ではなく、これまでに開発してきた全ての航空機に共通する問題で、過去の戦闘機は次々と新型機が開発されていたためアップグレードを行う必要もなく、何十年も飛行させる必要がないのでサポートやメンテナンスにかかるコストも大して問題にならなかったが、現在の戦闘機は運用期間が20年を越えることも珍しくなく、ライフサイクルコストに占める運用・維持コストの方が大きくなればなるほどデータの権利は価値が出てくる。

モノポリー状態の米防衛産業界、言い値での調達を強要される国防総省

出典:Lockheed Martin NGAD

つまり競争入札でF-35のようなプログラムを獲得さえすれば、プログラム全体に関わる作業から他社を締め出して独占することができ、国防総省は出来上がったシステム全体に対する権利を持っていても、システムを構成する各技術について所有権がないため、アップグレード作業やサポート作業に競争原理を導入するのが困難で、ケンドール長官は「技術的データの大部分を政府所有にしてオープンな設計に改め、今後のプラットホーム開発は誰をインテグレーターに選んでも新規サプライヤーの参加を可能にする」と言っているのだ。

因みにアサド氏は「トランスダイムによるAH-64の部品価格の吊り上げ」にも言及しており、供給企業が1つしかなく「競争の原理」が機能しない独占状態の危うさが強調されている。

モノポリー状態の米防衛産業界、言い値での調達を強要される国防総省

出典:U.S. Army photo by Sgt. Oscar Toscano

トランスダイムは軍がスペアパーツを調達している企業を次々と買収、この中にはAH-64の重要なバルブを製造する企業も含まれており、同社は買収後にバルブの供給価格を約40%(747ドル)も値上げしたらしい。そのため創業者のニック・ハウリー氏は価格に吊り上げ疑惑で2度も議会に召喚され、もっと価格を下げても十分利益を確保できるのではないかという議員の質問に「我々は法律に従い請求しているに過ぎず、国防総省に製品を安く提供するのは我が社の問題ではない」と主張。

この公聴会に出席したアサド氏は「イラクにあるAH-64を飛ばすのにバルブが必要なんだ」と訴えたが、ハウリー氏は「貴方たちが提示する価格を受け入れるまでバルブを出荷しない」と言い返し、最終的にバルブの価格は12,000ドルまで値上がりしたが、代替バルブを提供できる企業がないのでトランスダイムが提示する価格で調達するしかなく、国防総省は報告書の中で「これは強要だ」と指摘しているらしい。

追記:米上院議員の超党派グループはオースティン国防長官に「防衛産業企業が価格を釣り上げている実態を調査せよ」と要請している。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Sgt. Alexandra Shea

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