香取慎吾(C)日刊ゲンダイ
性加害問題と独占禁止法違反疑惑は、線で繋がっているのではないか。ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長が5月14日、ジャニー喜多川前社長(2019年に死去)の性加害問題について謝罪し、大手メディアも報道した。その3日後にはNHKが『クローズアップ現代』で《“誰も助けてくれなかった” 告白・ジャニーズと性加害問題》を特集した。
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数十年前からジャニー氏の疑惑は伝えられており、2003年には東京高裁で性加害を認定されている。それでも、テレビやスポーツ紙は口をつぐんできた。ジャニーズ事務所に頭が上がらなかったからである。
「今の“ジャニーズ帝国”は、既に1980年代前半には出来上がっていました。近藤真彦、田原俊彦、野村義男のたのきんトリオ、シブがき隊など何人ものアイドルが人気になったため、当時の副社長であるメリー喜多川氏は気に食わない報道があれば噛みつき、『おたくの出版社にはタレントを出さない』などと圧力を掛けることができるようになった」(出版関係者)
■男性アイドルは何十年もジャニーズの独占状態
他の事務所から男性アイドルがデビューしても成功することはほとんどなく、何十年もジャニーズ事務所の独占状態が続いた。
「女性アイドルは色んなプロダクションから出ていた。当時、松田聖子はサンミュージック、中森明菜は研音、河合奈保子は芸映など幅広かった。それなのに、売れている男性アイドルはジャニーズ事務所が独占していた。異常な状態でした。ジャニー氏のアイドル候補生を見極める目、売り出し方の戦略が鋭かったことはありますが、メリー氏がメディアに幅を利かせていたことも大きい。ボンド企画が『少女隊』をデビューさせると、メリー氏が『少年隊』と名前が酷似していることに激怒。テレビなどが圧力に屈したため、少女隊はあまり番組に出演できなかったと業界では伝えられています。この時も、週刊誌はジャニーズ事務所の妨害を報じていました。でも、テレビのワイドショーなどでは触れられなかったと記憶しています」(ベテラン芸能マネジャー)
■「Mステ」から姿を消したDA PUMPへの横槍疑惑
安室奈美恵さんやSPEEDを輩出し、1990年代に大手芸能事務所になった『ライジングプロダクション』は1997年に男性アイドルグループのDA PUMPをデビューさせる。しかし、ここでもジャニーズの横槍が入ったと言われている。
「人気音楽番組『ミュージックステーション』にデビュー2曲目までは出演していたのに、3曲目以降は姿を消した。DA PUMPの曲はオリコン上位にランクインしていましたし、1998年から5年連続でNHK紅白歌合戦に出場するほど人気があったのに、『Mステ』には出られなかった。次の出演は『U.S.A.』がヒットした2018年です。21年も空白があった。番組にはほとんど毎週ジャニタレが出ていたので、ジャニーズ事務所から圧力が加わったと見られています」(前出のベテラン芸能マネジャー)
■2019年に元SMAPに圧力をかけた疑いで公取委が注意
2019年には事務所から独立した元SMAPの香取慎吾(46)、稲垣吾郎(49)、草彅剛(48)の3人が民放のテレビ番組に出演できないように圧力をかけた疑いがあるとして、公正取引委員会から注意された。
「ジャニーズ事務所は圧力を否定していました。ただ、2022年には『文春オンライン』が前年の香取の主演ドラマで主題歌のアーティストが直前で代わったことを証拠メール付きで報じています。そこには《ジャニーズと弊社との関係性を鑑み》《今後、辞めジャニ案件が更に出て来ると思いますが、都度慎重に対応させて頂けたら》と書かれていました。これは忖度なのかもしれませんが、なぜこんな事態が起こるのか。過去に圧力があったから、忖度するようになったという考え方もできますよね」(前出のベテラン芸能マネジャー)
公取委は確定した証拠までは得られなかったものの、事務所側とテレビ局側への調査を総合すると、独占禁止法違反につながり得る行為があると判断したため注意をした。
「圧力に屈していたとすればテレビ局も情けないですけど、圧力は法律違反でもある。ジュリー社長は“圧力疑惑”に関して丁寧に説明すべきでしょう。なぜなら、ジャニー氏の性加害についてテレビが沈黙していた裏には、局のジャニーズへの配慮があったためだと考えられるからです。なぜ配慮したかといえば、報道したら音楽番組やドラマなどに事務所のタレントが出てくれなくなると思ったからでしょう。“性加害”と“圧力”は別の問題ではなく、線で繋がっていて、根っこは同じなんです」(週刊誌記者)
ジャニーズに頭が上がらないテレビ局という構図は、数十年前からのメリー氏を中心とした事務所の圧力に端を発していたのか。それがジャニー氏の性加害を報道しなかった理由になっていたとすれば……。こちらも事務所には説明責任があるだろう。