30日、モスクワで無人機攻撃を受けたとされる集合住宅=AP
ウクライナに侵略するロシアの首都モスクワへの無人機攻撃を巡り、ロシア語の独立系メディア「ノーバヤ・ガゼータ欧州」などは、無人機の多くがプーチン大統領ら要人の邸宅が集中するモスクワ西郊の高級住宅街一帯を標的にしていたと報じた。ウクライナ軍が近く着手する大規模な反転攻勢を前に、プーチン政権は露国内の防空網の強化も迫られている。
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報道によると、少なくとも無人機2機は30日、プーチン氏の公邸から数キロ・メートルの地点を飛行中に撃墜された。プーチン氏は今月3日、露大統領府が無人機で攻撃された際、この公邸に滞在していたとされる。一帯にはプーチン氏のほか、首相や国防相、富豪の家がある。
プーチン氏は30日、国営テレビで、「ウクライナはロシア国民を脅す道を選んだ。テロ行為だ」などと非難し、防空網に関しては「なすべきことがある」と強化する意向を示した。
露政府は30日の無人機攻撃をウクライナによるものと断定し、露外務省は声明で「ロシアはウクライナに対し最も厳しい措置を講じる権利がある」と警告した。露メディアは30日、露内務省がウクライナ軍の総司令官や陸軍司令官ら3人を指名手配のリストに載せたと一斉に報じた。
これに対してウクライナは「直接の関係はない」(大統領府顧問)との立場で関与を認めていない。
無人機攻撃の背後関係や実態には不明な点が多い。ウクライナ製の無人機が使用されたとの見方が出ているが、ロシア国内の抵抗勢力による攻撃の可能性も排除できない。米国のカリーヌ・ジャンピエール大統領報道官は30日の記者会見で、攻撃に使用された無人機に関し、「情報収集中だ」と述べるにとどめた。
一方、露南部クラスノダール地方当局は31日、石油精製施設が2度、無人機で攻撃されて爆発が起きたと発表した。プーチン氏が頻繁に訪れるソチの公邸もクラスノダール地方にある。ウクライナ国防省情報総局の報道官は30日、英字紙「キーウ・ポスト」に「我々はプーチンの居場所を常時監視している」と述べた。